知っ得コラム

より良い診察のために知っておいてほしい「受診のコツ」Q&A

医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁

2025.02.09(月)

日々の診療で、痛みや不安を抱えて来院される患者さんと向き合う中で、私たちが常に考えていることがあります。 それは、「限られた時間の中で、いかに正確な診断をし、少しでも楽になって帰っていただくか」ということです。

実は、患者さんのちょっとした準備や、診察室での伝え方の違いで、診察の質は大きく変わり、結果として治療の効果にも影響します。

今回は、よくいただく質問にお答えしながら、「医師が診察しやすい=患者さんにとってメリットが大きい受診の方法」をお伝えします。
ご本人様はもちろん、付き添いのご家族やケアマネジャー、介護スタッフの方々にも、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。


Q1. 整形外科に行くときは、どんな服装が良いですか?


A. 「患部をすぐに、サッと出せる服装」がベストです。


これは単なるマナーの話ではなく、「正確な診断」と「時間の有効活用」のために非常に重要です。 整形外科の診察では、患部を直接見たり、触れて熱感を確認したり、関節を動かしたりして診察を行います。
診察室に入ってから服を脱ぐのに時間がかかったり、衣服が締め付けて患部がよく見えなかったりすると、診察時間が短くなったり、待ち時間が長くなったりして、診断の精度が落ちてしまうことがあります。

部位別に、私たちが推奨する服装とその理由をご説明します。

・膝関節が痛い時


【NG】 ピッタリとしたジーンズ、細身のズボン、厚手のタイツの重ね履き
【推奨】 裾(すそ)が広くて柔らかいズボン、またはジャージ素材

膝の診察では、膝のお皿の上10cmくらいまで捲り上げる必要があります。
硬いズボンを無理に捲り上げると、太ももが締め付けられて血管が圧迫され、足の色が悪くなったり、本来の「腫れ」の具合が分からなくなってしまいます。
スムーズに膝が出る服装であれば、すぐにエコー検査や注射などの処置に移ることができます。

・股関節(足の付け根)が痛い時


【NG】 スカート、ワンピース、補正下着(ガードル)
【推奨】 ゆったりとしたズボン

女性の場合、「ズボンを脱ぐのは恥ずかしいから」とスカートで来院される方がいらっしゃいますが、実は逆効果になることがあります。
診察台で足を曲げたり広げたりする際、スカートだと裾が乱れが気になり、患者さんご自身が診察に集中できないことが多いのです。
私たちもタオルを掛けるなど配慮しますが、その掛け直しで診察のテンポが悪くなってしまいます。
ズボンの方が、お互いに余計な気を使わず、関節の動きをしっかり確認できます。

・肩(かた)が痛い時


【NG】 被り物(タートルネックなど)、何枚もの重ね着
【推奨】 前開きのシャツやカーディガン

痛い肩を無理に上げて服を脱ぐのは、患者さんにとって大きな負担です。
前開きの服であれば、腕を通すだけで着脱ができ、注射などの処置もスムーズに行えます。
「見せてほしい場所がすぐ出せる」。
それだけで、着替えの時間を「治療の時間」に充てることができます。ぜひご協力をお願いします。


Q2. 痛いところがたくさんあります。全部診てもらえますか?


A. できるだけ診させていただきたいです。ただし、「診察の最初に」すべて教えてください。


ご高齢になると、膝も腰も肩も…と、あちこちに不調が出るのは自然なことです。私たちは、そのすべてに対応したいと考えています。

しかし、一番困ってしまうのが、診察が終わって席を立とうとした時に、「あ、先生。実は昨日からここも痛くて…」とおっしゃるケースです。

この場合、一度閉じたカルテを開き直し、追加でレントゲンを撮るために再度移動していただく必要があり、診察の流れが完全に止まってしまいます。
これは、患者さんご自身の滞在時間が伸びるだけでなく、後ろで待っている他の患者さんの待ち時間にも直結します。

【スムーズな受診のコツ】

受付で問診票を書く際、または診察室に入って椅子に座った最初の一言で、
「今日はいつもの膝と、あと肩も痛いので診てほしいです」と、すべて伝えてください。

最初に情報をいただければ、
「先にまとめてレントゲンを撮りましょう」
「今日は一番つらい膝を処置して、肩はまずお薬で様子を見ましょう」
といった、効率的で無理のない治療計画が立てられます。
「後出し」は誰も得をしません。
遠慮せず、最初に全部出し切ってくださいね。


Q3. 薬について気をつけることはありますか?


A. 「お薬手帳の持参」と「用法用量の遵守」の2点を徹底してください。


1. 「あのピンク色の薬」では分かりません。お薬手帳は必須です。

「いつも飲んでいるピンク色の丸い薬が欲しい」と言われることがありますが、薬の色や形は製薬会社によって異なります。同じ成分でも、会社が違えば白いこともあれば四角いこともあります。

特に他院で処方された薬は、名前、量(mg)、回数が正確に分からないと、飲み合わせの確認ができず、重大な事故につながる恐れがあります。

ご自身の安全を守るためにも、お薬手帳は必ず毎回ご持参ください。

2. 決められた量と回数を守ってください。

「薬を飲んでも治らない」と相談を受けることがありますが、よく伺うと
「痛くない時は飲んでいない」「1日3回を2回に減らしている」
というケースが少なくありません。

医師は、「処方どおりにしっかり飲んだうえで、どう変化したか」を見て、薬が効いているのか、量が足りないのか、別の薬に変えるべきかを判断します。
自己判断で飲み方を変えてしまうと、薬の効果判定ができず、適切な治療の変更ができません。
「治らない」と諦める前に、まずは指示どおりに飲んでみてください。それが治療の第一歩です。

※ただし、服用後に発疹が出たり、気持ち悪くなったりした場合は「副作用」の可能性がありますので、すぐに中止してご相談ください。


Q4. 先生の話が聞こえにくいので、マスクを外してもいいですか?


A. 申し訳ありませんが、特に冬場は院内感染防止のため、着用をお願いします。


「先生の顔が見えないと不安」「声がこもって聞こえない」というお気持ち、とてもよく分かります。しかし、病院には免疫力が低下している方や、重い基礎疾患をお持ちの方が多く来院されます。
また、もし私たち医療スタッフが感染症にかかってしまうと、病院自体を休診せざるを得なくなり、地域医療が止まってしまいます。

マスク着用は、あなた自身を守り、他の患者さんと医療スタッフを守るための「思いやり」です。

もし耳が遠くて聞こえにくい場合は、マスクを外すのではなく、
「耳が遠いので、大きな声でお願いします」と遠慮なくお伝えください。
私たちは声を張ることにも慣れていますし、筆談やジェスチャーも交えて、しっかり伝わるよう努力します。


Q5. 痛くても歳だから仕方ないと諦めています。病院に行っても意味はありますか?


A. 「元通り」にはならなくても、「今より良くする」ことは可能です。


確かに、変形してしまった骨を、20代の頃のように真っ直ぐに戻すことは、手術以外では難しいかもしれません。その意味では「完全には治らない」場合もあります。
しかし、整形外科の治療目標は、レントゲン写真をきれいにすることだけではありません。

「痛みを減らして、夜ぐっすり眠れるようにする」
「歩ける距離を伸ばして、買い物を楽しめるようにする」
こうした生活の質(QOL)を上げることは、何歳からでも可能です。

「もう歳だから」と家に閉じこもってしまうと、筋力が落ち、認知機能も低下し、本当に動けなくなってしまいます。 私たちは、皆さんが「年齢なりに、不自由なく生活を楽しめる状態」を維持できるようお手伝いします。
「痛いけど、注射とリハビリをしたら旅行に行けたよ」
そう言って笑う患者さんを見るのが、私たちの何よりの喜びです。
諦めずに、一緒にできることを探していきましょう。


最後に


いかがでしたでしょうか。
病院という場所は、どうしても緊張する場所です。だからこそ、私たち医療者と患者さん、そしてご家族が「チーム」となって協力することが大切です。

  1. 診察しやすい服装でご来院ください(膝・肩・股関節は特に)。
     マスク着用など、お互いの思いやりをお願いします。
  2. 痛みを諦める必要はありません。気になることは、診察の「最初」にすべて伝えましょう。
  3. お薬手帳を持参し、薬は指示通りに服用しましょう。


これらを少し意識していただくだけで、診察室での時間はもっと有意義なものになります。
私たちも、皆さんの痛みに対して、より集中して向き合うことができます。


富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。

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