褥瘡の予防とポジショニングについて 身体介助シリーズ
大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 後迫春香
2025.11.25(火)
褥瘡(じょくそう)とは、一般的に「床ずれ」とも呼ばれる、圧迫やずれによって皮膚やその下の組織に生じる傷のことです。
褥瘡には、発見が早く症状の軽いものから、時間が経って発見され重症化したもの、身体の複数箇所にできる多発性のもの、さらには車椅子で活動している元気な方にも発生するものなど、さまざまなタイプがあります。
今回は、褥瘡の予防と、その対策の中でも重要なポジショニングについて紹介します。

褥瘡ができる原因
褥瘡ができる原因には、「圧迫」「ずれ」「栄養不足」が大きく関係しています。
① 圧迫
ベッドや車椅子で長時間同じ体勢を続けると、同じ部位が圧迫され続け、皮膚やその下の組織に血液が流れにくくなり、褥瘡ができやすくなります。特に、身体の中でも骨が突出している部位は圧迫が起こりやすく、やせ型の方や、麻痺などで筋肉がやせている部位には褥瘡が発生しやすい傾向があります。
② ずれ
電動ベッドなどで背上げをした際、身体が下方にずり落ちることがあります。この時、腰や背中、臀部には「ずれ」の力が加わります。また、時にはシーツや衣類のシワが皮膚を巻き込んでしまうことでも「ずれ」の力が働きます。このような力が加わると皮膚や皮下組織が水平方向に引っ張られ弱い圧力でも損傷しやすくなり褥瘡ができやすくなります。
③ 栄養不足
栄養状態の悪化も、褥瘡を発生させる要因の1つです。特にタンパク質不足では、皮膚組織の耐久性が低下して皮膚の再生能力が低下します。
褥瘡の起こりやすい場所
褥瘡は、「圧迫」や「ずれ」が起こりやすい、骨が突出していて、体重がかかりやすい部位に発生します(図1)
一般的にはお尻の下の「仙骨部」にできやすい印象がありますが、背中が丸くなる「円背(えんぱい)」の方であれば、そのカーブの中心部分にもできやすくなります。つまり、褥瘡が起こる部位はその方の体形や姿勢によって異なります。

図1: 日本褥瘡学会 床ずれ(褥瘡)予防パンフレットより抜粋
(https://www.jspu.org/medical/books/docs/tokozure_yobo_pamphlet.pdf)
褥瘡の兆候と予防のするポイント
褥瘡は、皮膚に突然傷ができるのではなく、まずは発赤(ほっせき)として現れることが多いです。初期の段階では、圧迫やずれを取り除けば発赤が消えることもありますが、次第に消えなくなったり、皮膚が硬くなったり、剥けたりするようになると、褥瘡への進行が疑われます。そのため、できるだけ「発赤」の段階で気づき、早めに対応することが重要です。
予防のポイント
- 長時間同じ姿勢にならないよう、数時間おきに体位交換を行う(姿勢を変える)
- クッションなどを用いて、特定の場所に圧迫が集中しないよう、「ポジショニング」を行う
ベッド上での体位交換では、仰臥位(仰向け)と左右の側臥位(横向き)のバリエーションを組み合わせます。介護や医療の現場では、側臥位では真横を向くと脚の付け根の部分に圧迫がかかりやすいため、「半側臥位(ベッドに対して30~45°傾けた姿勢)」を採用することが多く、この際には、クッションによるポジショニングが必須です。体位を変えた後は、身体と接地面の間にずれが残らないよう注意します。
また、マットレスや車椅子の座面クッションを体圧分散性の高いものに変更することも効果的です。褥瘡リスクの高い場合には、エアマットレスなどの専用用具を使用することもあります。
ポジショニングによる褥瘡予防
ベッド上でのポジショニングのポイントを簡単に紹介します。
体圧の強い部分を軽減するためには、圧がかかっていない場所へ体重を分散させることが大切です。そのためには、身体が浮いている部位にクッションなどを挿入し、できるだけ広い面積で体を支えるようにします(図2)。

図2: 明日から役立つポジショニング実践ガイドブックより抜粋
(https://www.nasent.net/wordpress/wp-content/uploads/2022/03/明日から役立つ%E3%80%80ポジショニング実践ハンドブック(A4サイズ2面)(220401).pdf)
クッションの挿入ポイントは個々の姿勢によって異なりますが、一般的には以下のようにします。
- 仙骨部や踵部の除圧:膝下を中心に脚の下へ広くクッションを入れる
- 円背の方:枕の高さを調整し、両肩関節~肩甲骨、両腕の下にもクッションを設置する
使用するクッションは、市販品のほか、福祉用具業者が開発したポジショニング専用クッションを用いることもあります。これらを使用することで、クッションの点数を減らして手順を簡略化したり、崩れにくくしたり、素材の工夫により効果的に除圧できる場合があります。
○参考・引用文献
日本褥瘡学会「床ずれ(褥瘡)予防パンフレット
https://www.jspu.org/medical/books/docs/tokozure_yobo_pamphlet.pdf
明日から役立つポジショニング実践ガイドブック
https://www.nasent.net/wordpress/wp-content/uploads/2022/03/明日から役立つ%E3%80%80ポジショニング実践ハンドブック(A4サイズ2面)(220401).pdf

田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

後迫春香
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生