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知っ得コラム

熱中症について

医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁

2024.8.19(月)

夏の暑さが厳しくなると、熱中症のリスクも高まります。特に高齢者や介護に携わる方々にとっては、その危険性を理解し、適切な対策を講じることが重要です。今回は、熱中症の分類、高齢者のリスクファクター、屋内でのリスク、WBGT(湿球黒球温度)について、応急処置方法、救急搬送要請の目安、そして予防法について詳しく解説します。


1. 熱中症の分類


熱中症はいままでI度〜III度の3つの段階に分類されていましたが、今年救急医療学会より新しいガイドラインが出され、I度〜IV度となりました。

※日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024(P.11)より引用

2. 高齢者におけるリスクファクター


高齢者は熱中症のリスクが高いとされています。その理由には以下の点が挙げられます。

体温調節機能の低下:年齢とともに、汗をかく能力や血流調節機能が低下します。

持病の影響:心疾患や腎疾患、糖尿病などの慢性疾患があると、体温調節がさらに難しくなります。

薬の影響:利尿剤や降圧剤などの薬が体内の水分バランスに影響を与えることがあります。

感覚の鈍化:暑さを感じにくく、適切な水分補給やクーリングが遅れることがあります。


3. 屋内でも熱中症になるリスク


熱中症は屋内でも発生するため、特に注意が必要です。例えば、エアコンが故障している部屋や、風通しが悪い場所では、気温と湿度が急上昇しやすくなります。特に高齢者は屋内での活動が多いため、室内環境の管理が重要です。


4. WBGT(湿球黒球温度)について


屋外での活動時には、WBGT(湿球黒球温度)を用いて熱中症のリスクを評価することが推奨されます。WBGTは、気温、湿度、風速、放射熱を総合的に測定する指標で、以下の基準があります。

安全(25度未満):通常の活動が可能。

注意(25-28度):軽度の熱中症リスクがあるため、定期的な休憩と水分補給が必要。

厳重警戒(28-31度):中度の熱中症リスクがあり、激しい運動は避けるべき。

危険(31度以上):高い熱中症リスクがあり、屋外活動は控えるべき。

https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
環境省が提示しているサイトがあるので、参考にしてみてください。


5. 応急処置方法


熱中症の症状が現れた場合、迅速な応急処置が必要です。

1. 涼しい場所に移動:日陰や冷房の効いた場所に移動します。

2. 衣服を緩める:体を冷やすために衣服を緩めます。

3. 水分補給:水やスポーツドリンクなどを飲ませます。意識がない場合は無理に飲ませないようにします。

4. 体を冷やす:濡れタオルで体を拭いたり、氷嚢を脇の下や股関節に当てたりします。


6. 救急搬送要請をする目安


以下の症状が見られた場合は、迅速に救急車を呼ぶ必要があります。

  • 意識障害:意識がもうろうとしている、または意識を失っている。
  • 高熱:体温が40度を超えている。
  • 頭痛や吐き気:通常の応急処置で改善しない。
  • けいれん:体がけいれんを起こしている。

 

また、上記熱中症分類でII度以上であれば医療機関の受診を考慮しましょう。

こちらのサイトも参考になります。
熱中症が疑われる人を見かけたら | 厚生労働省


7. 予防法


熱中症を予防するためには、以下の点に注意することが重要です。

適切な水分補給:喉が渇く前にこまめに水分を摂取します。特に高齢者は、自分で水分補給を意識することが難しい場合があるため、周囲のサポートが必要です。緑茶やコーヒーなどカフェインを含むものは利尿作用も考慮し、多めに摂取するよう心がけましょう。心不全や腎疾患などで体内の水分コントロールが難しい場合は主治医に相談してください。
OS-1などの経口補水液も常備するようにしましょう。

涼しい環境の確保:エアコンや扇風機を使用し、室内の温度と湿度を適切に保ちます。

衣服の工夫:通気性の良い衣服を選び、外出時には帽子や日傘を使用します。色の濃い服は蓄熱してしまうので、薄めの色がおすすめです。

定期的な休憩:屋外での活動時には、定期的に休憩を取り、体を冷やすよう心がけます。

バランスの取れた食事:栄養バランスの取れた食事を心がけ、体力を維持します。

※ウェザーニュースより引用

介護に携わる方々や高齢の家族がいる方は、これらの知識を活用し、熱中症から利用者さんもしくは大切な家族を守るための対策を徹底しましょう。特に高齢者は、自分で異変を感じにくいため、周囲の気配りが一層重要です。

 


富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。

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