医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁
2026.04.13(月)
はじめに
「膝が痛い」「腰が痛い」と訴える患者さんに対して、診察の中で必ずお話しすることがあります。
それは、“体重”です。
もちろん、すべての原因が体重とは限りません。
しかし実臨床では、膝痛や腰痛の “根本” に体重が関係しているケースは非常に多いのが現実です。
一方で、ダイエットに関しては情報が多く、「頑張っているのに結果が出ない」という声もよく聞きます。
今回は「ダイエットのウソ・ホント」という形で、関節を守るために本当に大切なポイントを整理します。

ホント①:1kg体重が減るだけで関節の負担は大きく減る
歩行時、膝関節には体重の約2〜3倍の力がかかるとされています。
つまり体重が1kg増えると、膝には約2〜3kg分の負担増加が起こります。
逆に言えば、1kg減量するだけで、歩くたびに2〜3kg分の負担が減るということです。
腰に関しても同様で、体重増加は椎間板や筋肉への負担を増やし、慢性的な痛みの原因になります。
「たった1kg」でも、関節にとっては大きな差になります。
ホント②:脂肪1kgを減らすには約7200kcalが必要
体脂肪1kgを減らすためには、約7200kcalのエネルギー消費が必要です。
例えば1日あたり240kcal減らせば、
240kcal × 30日 = 約7200kcal
つまり1ヶ月で約1kgの減量となります。
このペースは遅いどころか、最も現実的でリバウンドしにくい速度です。

ウソ①:運動すればすぐに体重は落ちる
運動だけで短期間に体重を落とすのは難しいです。
ウォーキング30分の消費カロリーは、約100〜150kcal程度。
一方、おにぎり1個は約180kcalです。
運動は
・筋力維持
・関節機能の改善
・代謝の維持
には非常に重要ですが、「減量の主役」ではありません。
ウソ②:筋肉をつければ基礎代謝が上がって痩せる
完全なウソというわけでもありませんが、「筋肉をつければ基礎代謝が上がって痩せやすくなる」という考え方には誤解があります。
確かに筋肉は代謝に関与しますが、
筋肉1kgあたりの基礎代謝増加は、1日約10〜15kcal程度とされています。
つまり、仮に筋肉を1kg増やしても、増える消費カロリーはごくわずかです。
さらに現実問題として、
・高齢者が筋肉を1kg増やすこと自体が簡単ではない
・関節痛があると高強度トレーニングが難しい
という点もあります。
筋トレは非常に重要ですが、目的は
・動ける体を維持する
・転倒を防ぐ
・痛みを改善する
ことであり、「代謝を劇的に上げるため」ではありません。
ホント③:減量のカギは“間食”にある
体重を落とす上で最も影響が大きいのは間食です。
お菓子や甘い飲み物は満腹感が少なく、摂取カロリーが増えやすい特徴があります。
例えば、
・缶コーヒー(加糖) → 約100kcal
・チョコレート少量 → 約150kcal
これを毎日続けると、1ヶ月で大きな差になります。
まずは
・回数を減らす
・水やお茶に置き換える
といった現実的な工夫が効果的です。

ホント④:消費カロリーは「METs」で見える化できる
消費カロリーはMETsで概算できます。
消費カロリー(kcal)
= METs × 体重(kg) × 時間(時間) × 1.05
例:体重70kg、ウォーキング(3METs)30分
→ 約110kcal
運動量を数値で理解することで、現実的な目標設定が可能になります。
まとめ
- 1kg減るだけで関節の負担は確実に減る
- 脂肪1kg=約7200kcal
- 月1kgの減量が現実的で安全
- 運動だけでの減量は難しい
- 筋肉増加による代謝アップは限定的
- 間食の見直しが最も効果的
無理なダイエットは必要ありません。
大切なのは、続けられる小さな変化です。
ちなみに私はラーメンが大好きで昨年72kgまで増えましたが、週の半分だけお昼ご飯をおにぎり1つと即席スープに変え、少し運動を追加することで、半年で4kgほど減量できました。
体重を少しずつ減らすことが、将来の「歩ける時間」を確実に延ばします。


富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。