サプリの部屋

知っ得コラム

認知症利用者と会話する時のコツ

大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 天眞正博

2025.02.25(火)


はじめに


認知症利用者との会話を円滑に進めるためには、その方の理解や感情に配慮し、安心感を与えることが極めて重要です。日常的に認知症利用者と接する際、いくつかのポイントを意識しておくだけで、より深く充実したコミュニケーションが可能になります。

本稿では、認知症利用者と会話する時に役立つコツを、具体的な例を留意点とともにご紹介します。


相手の視点に立ち、ゆっくりと理解を促す


まず、認知症利用者とのコミュニケーションでは、「相手の視点に立つ」ことが大切です。認知機能の低下により、言葉を探すのに時間がかかることがあります。そのため、介護者には相手のペースに合わせ、ゆっくりと話題を進める配慮が求められます。

難解な表現や抽象的な比喩は避け、短く明瞭な文を用いることで理解を促せます。また、表情や身振り、視線といった非言語的要素を取り入れることで、言葉だけでは伝えきれない気持ちや意図を補うことができます。


人生歴や嗜好を踏まえた話題選び


次に、認知症利用者の人生歴や嗜好を踏まえた話題を選ぶことは、記憶を呼び起こし、会話を活性化させる効果があります。例えば、かつて好んでいた音楽、若い頃の仕事、地元のお祭りなど、本人にとって馴染み深いエピソードを取り上げることで、記憶の扉が開きやすくなります。

たとえ断片的な記憶しか残っていなくても、「昔はよく○○を楽しまれていましたね」といったやわらかな問いかけをすることで、「分かってくれている」という安心感を相手に与え、より積極的な反応を引き出すことができます。


非言語的コミュニケーションの活用


また、失語症状や表出の困難さを伴う認知症利用者には、Yes/Noで答えられるような簡潔な質問や、写真・イラスト・カードなどの視覚的な手がかりが有用な場合があります。言葉での返答が難しくても、笑顔やうなずき、指さしといった非言語的反応を丁寧に受け止めることで、その方が伝えようとしている気持ちを汲み取ることが可能です。

「うまく話せないから意味がない」と捉えず、残されたコミュニケーション手段を最大限に活用することで、相互理解が可能になります。


共感と安心感を重視した対応


さらに、認知症利用者との会話では、情報の正確さよりも、その時々の感情を大切にすることが有効です。話の内容の正確さよりも、「自分が理解され、尊重されている」という感覚が、より良い関係性の基礎となります。

声の調子や表情から相手の不安や戸惑いを察し、「少しご心配なお気持ちですね」「わからないことがあれば一緒に考えていきましょう」といった共感的な言葉をかけることで、認知症利用者は心を開きやすくなり、対話への意欲が高まります。


柔軟な対応の重要性


最後に、認知症の状態は日々、また時間帯によっても変動します。昨日はスムーズに話せていた方が、今日は困難を感じることもあるでしょう。そのため、決まった対応マニュアルに固執するのではなく、その時々の様子に合わせてコミュニケーションを柔軟に調整することが大切です。

適切な声掛けや話題、理解を促すための工夫を臨機応変に変えながら、認知症利用者が安心して自身を表現できる環境を整えることが、豊かな対話体験に結びつきます。


おわりに


これらの工夫を重ねることで、認知症利用者との会話は単なる言葉のやり取りにとどまらず、相手の人生や感情に触れ合う貴重な機会となります。

その方の尊厳を守り、その方らしさが発揮できる日常を支えるためにも、日々の対話を大切にし続けることが何よりも重要です。

 


田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

 

天眞正博
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生

 

 


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