レクリエーションを効果的に実施するために②
大阪公立大学 准教授 田中寛之
2024.3.25(月)
レクリエーションの効果を最大限に引き出すために意識する3つのポイント
①しっかりと活動をできているか
ごく当たり前のポイントかもしれませんが、とても大切な視点です。
レクリエーションを実施するにあたっては、まず利用者の方々がその活動に対してしっかりと取り組めているかどうかを確認します。
下のピラミッドの図をみていただくとわかりやすいです。
上の階層にいくほど利用者にとってその活動が効果的であるという指標になります。眠っていると活動の意味を感じとれませんし、活動以外のことをしていても効果的ではありません。活動は、利用者が見て、聴いて、しっかり取り組んでいるかを確認しながら行いましょう。
ただ、集団での活動が苦手な人もいます。レクリエーションを見ているだけでも楽しい気分になる人もいるので、性格や興味関心に合わせてその人が一番楽しめるポイントを見極めることが大切です。
②笑顔で楽しそうに活動をできているか
次に、そのレクリエーションの効果を見極めることです。
効果を見極めるには、笑顔かどうかを確認します。無理矢理参加させ、しかめっ面で行っていても効果はありません。しっかり楽しめるように内容や声かけを工夫しましょう。
認知機能の低下が見られる人にとっては、その活動が難しく感じることがあります。そのため、難易度の調整も大切です。活動中に笑顔が見られるかどうか、ということが難易度調整の指標の1つにもなります。笑顔でその場で過ごすことができるということは、難易度が適切で心地よいという判断になります。
③他者と交流できているか
最後に、他者と楽しく交流できているかです。
みなさんもご経験があると思いますが、楽しい活動だと、つい他者に話しかけたり、会話が弾んだりすることがあると思います。
レクリエーションでも同じです。
その活動が単なる「意味のない活動」ではなく、交流を持てるような「意味のある活動」になるように、スタッフからの言葉掛けや利用者同士の交流を促せるような配慮も重要です。
バリエーションを増やすための工夫 -レクリエーションシートの作成-
多くの介護現場ではスタッフが、ある程度決まったレクリエーションを繰り返し行っていることが多いと思います。ここでは、レクリエーションのバリエーションを増やすためのシートについて示してみます。このシートを作成すれば、バリエーションを増やすことができますし、誰が行ってもある程度には同じ質を担保でき、その時々の利用者層に合わせて適切なレクリエーションを選択することができます。
最近では介護現場のレクリエーションの書籍が多くありますが、部屋の広さや物品、参加人数によって、書籍にのっているものと完全に同じことができるとは限りません。そのため、その施設オリジナルのレクリエーションシートを作成していくことも有用です。例えば下のようなシートです。
シートを作成するうえでの大切なポイント
- 活動の目的を明確にする(例;関節の動きをよくするためなど)
- 必要な人数やグループ(利用者・スタッフ)を記載する
- 運動が中心か、頭を使うこと(認知機能)が中心かを区別する
- 必要物品を記載する
- 手順(方法)を箇条書きで示す
- 可能なら応用も示す(例;チーム対抗戦や難易度を変えることができるなど)
この6つのポイントをおさえて、実際の様子を写真や参考にした書籍の一部のコピーをとってファイリングしておくとよいでしょう。もちろん、データ化しても良いと思います。このシートの形式は自由に変更すればよいので、あくまで一つの参考になります。
シートの中には、風船バレーを例にのせましたが、歌体操、テーブルテニス、棒体操、しりとりゲームなど、たくさんのレクリエーションの種類があります。みなさんの施設でのオリジナルの活動をとりいれてみてはどうでしょうか?
田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。