知っ得コラム

認知症の種類ごとの特徴とケアのポイント|4大認知症をわかりやすく解説

大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 天眞正博

2026.06.22(月)


1. アルツハイマー型認知症(Alzheimer's type dementia)


認知症は「症状」ではなく「状態」を示す言葉です。
脳の病気や障害など、さまざまな原因によって、認知機能が低下し、日常生活活動に支障が出ている状態を指します。
認知症に至る疾患は単一ではなく、脳の神経細胞がさまざまな原因で障害されることによって起こる「症候群」です。
今回は介護の現場でよく遭遇する主要な4つの認知症疾患について、それぞれの特徴とケアのポイントを整理します。

アルツハイマー型認知症は、最も頻度が高い疾患であり、脳全体が徐々に萎縮していくことが特徴です。

特徴

脳内にアミロイドベータなどの異常タンパク質が蓄積し、神経細胞が脱落します。
疾患の経過としては、時間とともに重症度が増加していきます。
記憶障害が中核症状として現れ、特に「ついさっきの出来事」が思い出せなくなる短期記憶の低下が顕著です。
病状が進行すると見当識障害(場所や時間の理解が難しくなること)や、言葉がうまく出ない失語症がみられます。

ケアのポイント

記憶が抜け落ちる不安に寄り添うことが重要です。
混乱している時は叱責せず、安心感を優先します。
環境の変化に過敏になる傾向があるため、安心できるルーティンを守り、その方がこれまで積み上げてきた生活史(ライフヒストリー)を尊重したケアが求められます。


2. レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies)


「レビー小体」というタンパク質が脳内に現れる疾患です。

特徴

記憶障害に加え、ありありとした「幻視」や、現実と夢の区別がつきにくい状態がみられます。
また、パーキンソン病のような歩行障害や筋肉のこわばり(パーキンソニズム)を伴い、転倒の危険が高いのも特徴です。
症状に日内変動があり、「さっきまで元気だったのに急に意識がぼんやりする」といった状態がよくみられます。

ケアのポイント

幻視に対して「そんなものはいない」と否定すると、かえって強い恐怖や不信感を抱かせてしまいます。
幻視の体験を否定せず、「怖いものが見えるのですね」と共感的に関わることが大切です。
また、転倒防止のための安全環境整備は必須となります。


3. 脳血管性認知症(Vascular dementia)


脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患の結果、脳の一部に血流が行き渡らなくなり、組織が損傷して起こります。

特徴

他の認知症と異なり、障害された部位によって症状が異なる「まだら認知症」が特徴です。
ある能力は保たれている一方で、ある能力は低下しているというように、「できること」と「できないこと」の差が激しいのが特徴でもあります。
また、抑うつ状態や感情失禁(突然泣き出すなど)が見られることもあります。
疾患の経過としては、微細な脳梗塞を繰り返すたびに段階的に重症度が増加していきます。

ケアのポイント

残存機能(保たれている能力)をいかに活かすかが鍵となります。
リハビリテーションを積極的に行い、身体機能の維持を支援します。
また、再発を防ぐための血圧管理や食生活の改善など、健康管理のサポートが医療職との連携の上で不可欠です。


4. 前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia)


前頭葉や側頭葉が萎縮する、比較的若年の方にもみられる認知症です。

特徴

記憶障害よりも、「人格の変化」や「行動障害」が先行します。
社会的なルールが守れなくなる(万引きや衝動的な言動)、同じ行動を繰り返す(常同行動)、感情のコントロールが難しくなるなどの症状が特徴です。
本人の苦痛に対する自覚(病識)が乏しいことが多く、周囲の介助者が疲弊しやすい疾患でもあります。

ケアのポイント

社会規範を逸脱する行動を「わがまま」と捉えず、脳の障害によるものと理解することが第一歩です。
無理に修正しようとせず、本人のこだわりを適度に受け入れつつ、安全を確保します。
また、家族の精神的負担が非常に大きいため、家族支援も重要になります。


疾患を超えた認知症ケアの本質


これらの疾患は、脳の障害部位によって現れる症状が異なります。
しかし、皆様に共通して意識していただきたいのは、「病名だけでその人を判断しない」という視点です。

例えば、同じ「アルツハイマー型」であっても、その方の性格や過去の習慣、今の環境によって、ケアへの反応は全く異なります。
「疾患による特徴」は、あくまで理解のための一助であり、実際のケアは「その人の人生」という文脈の中で行う必要があります。
特に、興奮などの行動障害や幻視が強い場合には、医師や薬剤師と連携し、服薬内容の見直しが必要になることもあります。

認知症への理解を深めることは、利用者様の「不可解に見える行動」の裏側にある、「本人自身の苦悩や悩み」「困りごと」を読み解くための大切なヒントとなります。



田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

天眞正博
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生

コメントする