サプリの部屋

知っ得コラム

高齢の利用者にとって適切な車椅子の選び方って?

大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 後迫春香

2024.7.22(月)

車椅子は街中でもよく目にする福祉用具のひとつですが、利用する場面や利用される方の特性により様々な種類が使い分けられています。どのようなポイントを押さえて選ぶのがよいか、ご紹介していきます。


車椅子の種類


車椅子の種類は、以下の4種類が代表的です。

タイプ 特徴 イメージ
自走用車椅子

・利用者ご自身で操作をするタイプ
・比較的、駆動輪(後輪)が大きい
・駆動輪(後輪)の外側にハンドリム(ここを掴んで漕ぐ)がついている

介助用車椅子

・介助者が操作をするタイプ
・比較的、駆動輪(後輪)が小さい
・ハンドリムはついていない
・他の型に比べ車体の幅がコンパクト、また重量も軽い場合が多い

電動式車椅子

・利用者が手元のコントローラ(リモコンやレバー)で操作をするタイプ
・操作に必要な力や体力の消耗が抑えられる
・バッテリーの搭載により、重量があるものが多い

リクライニング
車椅子

・首や頭まで支えられるタイプ
・背もたれの角度を調整できるものが多い
・その他の手動型車椅子と比較すると重量があり、方向転換などの小回りがききにくい

他にも、自走介助兼用車椅子などもあります。また、それぞれの型の中にも、スタンダードなモデルと、利用者に合わせて様々な調節が行なえるモジュールタイプがあります。

これらの特徴を踏まえ、次に選び方のポイントについてご紹介します。


車椅子の選び方


車椅子を安全に、便利に、また快適に利用していくためには、以下のようなポイントを押さえておくことが望ましいです。

利用者の体格

車椅子の座面の幅や奥行き、床までの距離などを利用者の体格と合わせます。座面の幅は標準的には40㎝前後です。奥行きは、奥まで深く座った際に太ももが2/3以上座面についているサイズがおすすめです。また、車椅子から立ち上がる際のことを考慮し、床から座面の距離は膝関節を90°に曲げて座った際に足の裏がちょうど床につく程度の高さが推奨されています。

円背(背中が丸くなる)などでスタンダードなタイプの車椅子では姿勢を安定させることが難しい場合には、モジュール型の車椅子を使用し、背もたれや座面の張りを調整することが有効です。

利用者の身体状況・認知機能

まず、体幹や頭をご自身で支えることが困難な場合にはリクライニング型車椅子の使用が望ましいです。一般的な背もたれの車椅子に座ることができる場合には、利用者ご自身での操作が可能な筋力や体力があるかといった点を考慮し自走型/介助型/電動型を選択します。

認知機能についても、ご自身で安全に配慮した操作を行う能力があるかという点に配慮する必要があります。この際には、利用する環境・場面(下記)との兼ね合いも考慮する必要があります。

利用環境・場面

①    スペース・障害物
②    乗車時間の長さ
③    持ち運びなどの必要性の有無

以上の点がポイントです。

自宅内などの比較的狭い環境で使用する場合には、車椅子の車体幅や方向転換をする際に必要なスペースを考慮する必要があります。段差などの障害物を頻繁に越える場合には、重量のある車椅子は適さないと考えられます。乗車時間が長くなる場合には、お尻が痛くなる、揺れる車椅子の上で身体を支えているのがつらくなるなどの問題が起こる可能性がありますので、その点を踏まえてクッション性や背もたれの形状などに無理のない車椅子を選定するとよいでしょう。車椅子の持ち運びや車への積み込みが必要となる場合には、折り畳み機能のあるもののなかから、重量やサイズを考慮し選定することをお勧めします。

利用者ご自身と介助者の皆様の双方が安全・安楽に車椅子を利用できることは、活動的に過ごせる時間や行動範囲の増加に繋がります。

車椅子を導入する際や、現状の車椅子が合わないなと感じる際には、ぜひ上記のポイントをチェックしてみてください

 


田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

 

後迫春香
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生

 

 

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