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知っ得コラム

骨粗鬆症の診断と治療:高齢者の健康を守るために

医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁

2024.10.15(火)

骨粗鬆症の診断と治療は、早期発見と適切な介入が鍵となります。ここでは、骨粗鬆症の診断方法と治療法について詳しく説明します。


診断方法


骨粗鬆症の診断には、以下の方法が一般的に用いられます。

DEXA法(デュアルエネルギーX線吸収測定法)

最も信頼性の高い骨密度測定法で、腰椎や大腿骨の骨密度を計測します。この方法により、骨粗鬆症の診断が正確に行えます。DEXA法は、骨密度を定量的に評価し、骨粗鬆症の進行度を把握するために非常に重要です。
※手首の骨(橈骨)等で測る方法もありますが、腰椎と大腿骨の数値が最も信頼性が高いとされています。

血液検査

骨代謝マーカーやカルシウム、ビタミンDのレベルを測定し、骨の健康状態を評価します。血液検査により、骨の形成と吸収のバランスを知ることができ、治療方針の決定に役立ちます。

身体検査

身長の変化や背骨の変形など、身体的な症状を確認します。特に背骨の圧迫骨折により身長が低下することが多く、これも骨粗鬆症のサインとなります。

骨粗鬆症ガイドライン2015より

骨粗鬆症ガイドライン2015より


骨粗鬆症の治療方法


骨粗鬆症の治療には、薬物療法と生活習慣の改善が重要です。ここでは、それぞれの治療法について詳しく説明します。

 

■薬物療法


ビスホスホネート

効果
骨吸収を抑制し、骨密度を増加させます。これにより、骨が脆くなるのを防ぎ、骨折のリスクを低減します。
服用方法
通常週に1回の服用や、月に1回の注射があります。服用時には、水と一緒に服用し、しばらく横にならないようにします。
副作用
胃腸の不快感や食道の炎症が起こることがあります。稀に顎骨の壊死や大腿骨の非定型骨折が報告されています。

選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)

効果
エストロゲンの作用を模倣し、骨密度を保ちます。特に閉経後の女性に有効です。
利点
エストロゲンのような骨強化作用がありながら、乳がんのリスクを増やさない利点があります。
副作用
血栓症のリスクが増加する可能性があります。特に、血栓症のリスクが高い患者では注意が必要です。

カルシトニン

効果
骨吸収を抑制し、骨密度を維持します。骨の痛みを軽減する効果もあります。
使用方法
鼻スプレーや注射として使用されます。
副作用
鼻スプレーの場合、鼻の乾燥や刺激感があることがあります。

ビタミンDとカルシウム補充

重要性
骨の健康を保つために必要な栄養素を補給します。これらのサプリメントは、特に食事から十分な栄養を摂取できない場合に有効です。
効果
骨密度を高め、骨折のリスクを低減します。

※全体的に薬物療法は歯科治療中に使用することが難しいものが多いです。歯科の治療の有無をかかりつけの先生にも相談しましょう。

 

■生活習慣の改善


栄養バランスの取れた食事

重要性
良質な栄養は骨の健康維持に不可欠です。特にカルシウムとビタミンDを豊富に含む食品を積極的に摂取します。
食品例
乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)、小魚、豆腐、緑黄色野菜など。

リスクの少ない運動習慣

重要性
適度な運動は骨の強化と筋力の維持に重要です。骨には適度なストレスをかけていないとどんどん脆くなってしまいます。可能な範囲で、寝たきりや車椅子だけでなく、リスクの少ない運動を取り入れることで骨折の予防に役立ちます。
運動例
ウォーキング:手軽に始められ、心肺機能も向上します。
軽い筋力トレーニング:筋肉を強化し、骨を支える力を向上させます。
バランス運動
ヨガや太極拳は、バランス感覚を養い、転倒のリスクを減らします。

禁煙と節酒

重要性
喫煙や過度のアルコール摂取は、骨の健康に悪影響を与えるため、これらを控えることが推奨されます。
効果
禁煙は骨の健康だけでなく、全身の健康維持にも寄与します。


介護者としての役割


介護に関する職員や高齢の家族がいる方々は、以下のポイントに注意しながら高齢者の骨粗鬆症リスクを低減し、健康を維持することができます。

環境の整備

重要性
家の中の転倒リスクを減らすために、家具の配置や照明を工夫し、滑り止めマットを使用するなどの対策を講じます。

定期的な健康チェック

重要性
定期的に骨密度測定や血液検査を受けることで、骨粗鬆症の早期発見と適切な治療が可能になります。

栄養管理

重要性
高齢者が適切な栄養を摂取できるように、バランスの取れた食事を提供します。特にカルシウムとビタミンDの摂取を意識します。

運動支援

重要性
高齢者が安全に運動できる環境を整え、適度な運動を促します。運動プログラムの作成や実施をサポートします。

骨粗鬆症は高齢者にとって重大な健康問題であり、早期の診断と適切な治療が求められます。介護に関する職員や高齢の家族がいる方々は、この疾患についての知識を深め、適切な対策を講じることが重要です。骨粗鬆症の予防と治療により、高齢者の生活の質を向上させ、健康な老後を支えることができます。
まずはお近くの整形外科で骨密度についての相談をしてみましょう。

 


富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。

 

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