身体的フレイルってご存じですか?〜ちょっとした体の衰え、早めの気づきで元気を取り戻せます〜
大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 鍵野将平
2025.07.28(月)
最近、こんなことはありませんか?
- 家の中でつまずきやすくなった
- 少し歩いただけで疲れるようになった
- 買い物袋を持つのが重く感じる
- 「出かけるのが面倒」と思うことが増えた
それは「身体的フレイル」のサインかもしれません。
◆「身体的フレイル」ってなに?
「フレイル」という言葉は、年齢とともに体や心が少しずつ弱っていく状態を表します。元気に生活できる状態と、介護が必要になる状態との中間にある段階です。

図.公益財団法人長寿科学振興財団「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」
https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/frailty-yobo-taisaku/R2-2-1.html
特に体の筋力や体力が落ちて、転びやすくなったり、日常の動作が大変になってきたりするのが「身体的フレイル」です。
まだ病気ではないけれど、放っておくと介護が必要な状態に進んでしまうこともあります。
でも大丈夫。早めに気づいて、対策をとれば、元気な状態に戻れる可能性があります。
◆見逃さないで!こんな変化に要注意
変化のサイン | チェックのポイント |
歩くスピードが遅くなった | 一緒に歩いた時に後ろを歩いていることが多い |
体重が減ってきた | 半年で2〜3kg以上減っていないか |
筋力が落ちてきた | ペットボトルのキャップが開けにくい |
外出が減った | 「面倒だから行かない」が増えてきた |
疲れやすくなった | 掃除や洗濯の後にぐったりしていないか |
◆今日からできる!身体的フレイルの予防と対策
身体的フレイルは、ちょっとした生活の工夫で予防・改善ができます。
難しいことを始める必要はありません。大切なのは「毎日コツコツ」と「無理せず続ける」ことです。
① 体を動かす習慣をつけましょう
- 毎日、5〜10分の散歩をする(天気が悪い日は室内で足踏みもOK)
- 階段の上り下りを1日に数回行う
- イスに座ったまま、つま先やかかとを交互に上げ下げする
※体力や体調に合わせて、できる範囲から始めるのがポイントです。

② 食事でしっかりたんぱく質を摂りましょう
- 毎食に「たんぱく質」を意識して摂取することが大切です。
- たんぱく質が多く含まれる食品には、肉・魚・卵・乳製品・豆腐などがあります。
- 食欲が落ちているときは、ヨーグルトや豆腐など、食べやすく消化しやすいものから取り入れてみましょう。
たんぱく質は、筋肉をつくる材料になるだけでなく、免疫力を保つ働きもあります。しっかり食べて、元気な体をつくりましょう。

③ 人と話す・外に出る
- ご近所さんや家族とのちょっとした会話も大切
- 地域のサロンや体操教室に参加する(見学だけでも◎)
- 買い物やお散歩を兼ねて外出する習慣をつける
体だけでなく、心と社会とのつながりを保つこともフレイル予防には欠かせません。

◆ご家族・介護者の方へ
「最近ちょっと元気がないな」と思ったら、「フレイルかな?」という視点で声をかけてみてください。
「一緒に散歩に行こうか」「これ、おいしそうだね」など、無理のない形で背中を押してあげることが、とても大きな支えになります。
早めの気づきと小さな行動が、「寝たきり」や「要介護」を防ぐ大きな力になります。
ぜひ、日々の暮らしの中で“元気の種”を見つけていきましょう。

田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

鍵野将平
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生