サプリの部屋

知っ得コラム

やすば
2024/11/15 17:49

介護事業所見学で感じたDXの根本的な課題

長文にはなりますが、特に介護施設の経営者や管理者の方にはぜひ読んでいただきたい内容となります。

 

弊社のケア記録アプリは介護記録に特化したシステムなので、私自身、正直介護報酬の請求に絡む業務を細かくは把握できていませんでした。ㅤ

 

先月、ケア記録アプリユーザーの経営者の方から、その事業所が使っている他社請求システムとケア記録アプリをいい感じに連動させて効率化できないか、というご相談をいただきました。

 

これまで介護現場の記録と請求システム間で連動して効率化できるようなデータはあまりないと私は考えていて、ケア記録アプリを記録特化型のシステムにしているのもそれが理由なのですが、前述のとおり具体的に請求処理がどういったことをしているかを知らなかったので、ちょうどよい機会だと思い、そのご相談をお受けすることにしました。

 

そして、数回にわけて実際に請求処理をしている場に立ち会いをさせていただいたのですが、そこで大きな気づきを得ることができたので、この場でぜひ皆さんにお伝えしたいと思いました。

 

 

まず、請求処理の準備として前月の実績を当月に複写します。その後、当月の実績に基づいて変更があった部分の修正が行われます。

 

請求処理のおおまかな流れはこのようになり、私の知る限り、介護請求システムはおおよそこの仕様になっているかと思われます。

 

今回私が見学したのは利用者43名の通所リハビリサービス事業所で、前月実績複写後に加算項目の実施確認、送迎減算のチェック、食事提供とリハビリパンツ貸与による自費請求の確認作業を行っていました。加算項目の実施確認以外の作業は数分程度の作業でした。

 

最も時間がかかっていたのは、請求システムに入力後にケアマネ報告用の別紙を作成し、それを請求システムの画面を見ながら手書きで転写、回数と単位と合計を電卓で計算し記載、計算ができた別紙をケアマネからFAXで送られてきた提供表に貼り付けるという作業でした。更にそこから計算結果の書かれた別紙と請求システムの画面を見ながら、請求内容に間違いがないかを2人の職員で読み合わせをする作業が行われていたのですが、作業工数はトータルで2人日程度です。

 

私はその作業に違和感を感じながらも黙って見てたのですが、請求処理を終えられたタイミングで、なぜケアマネ報告用の別紙をわざわざ作成して計算をしているのかを請求担当の方に尋ねてみました。その回答は、前任者から引き継いだままやっているので、なぜそうしているかの理由は分からないというものでした。

 

おそらくこんな面倒な作業はしなくてもよいはず、そう思った私は、事業所の方に承諾を得てその請求システムを操作させていただくことにしました。たくさんメニューのある中に「一括印刷」というボタンがあり、試しにそれを押してみると、請求担当の方が一生懸命作成、手計算していた別紙と同様のPDF帳票が出力されました。

 

請求担当の方にこの帳票ではダメでしょうか?と尋ねたところ、しばらく沈黙があり「これってどうやって出したんですか?これまでの私の苦労は何だったんでしょう。。」と複雑な表情をされましたが、続けて「これで私の一番面倒だった作業が一瞬で終わります」と喜ばれました。

なぜこれまで押したことがなかったかというと、引き継ぎを受けた以外のボタンを触ろうという意識もなく、あっても怖くてできないとも言われてました。

 

 

今回の請求処理の見学を通じて私が伝えたいのは、DX化の問題はシステムの問題でも担当者のITリテラシーの問題でもないということです。最も大きな問題は、そのシステムの使い方を知らない、知ろうとしない(もしかするとその余裕すらない)ということです。

 

見学をさせていただいた事業所の経営者の方も、私に請求担当者を紹介した後は「あとよろしくねー」と言い残され、それ以降関与されることはありませんでした。効率化はしたいけど、自分には関わる余裕はない、現場でなんとか解決してほしい、と考えられているのだと感じました。

 

たった一つのメニューを知っただけで一瞬にして2人日分の業務効率化ができたわけですが、これはあくまで一例に過ぎないと思っています。今回は請求処理だけを見させていただきましたが、弊社のケア記録アプリもユーザーが気づいていない機能がたくさんあります。もちろん都度お知らせはしていますが、残念ながらキャッチしてもらえていないことの方が圧倒的に多いです。

 

実際に訪問させていただき、こんな機能あるのご存知ですか?と聞くと、多くの事業所で「こんな便利な機能があるんですね!知らなかったです、使います!」「あるのは知ってましたが使ったことがなかったです」と仰られます。

 

 

「システム連携すれば効率化できる」、「これからの時代はAIだ」と国もさまざまなメーカーも口を揃えて同じようなことを言っていますが、DXの問題はもっと根底にあり、まずは現場で働く各担当がどんなことをしているのか、そのやり方が本当に適切なのかを確認することが大切です。

 

あなたが経営者や管理者であれば、耳障りのいい謳い文句の高機能なシステムを導入することよりも、まずは各業務が適切に行われているかを確認してください。その上で、既存システムやこれから導入しようとするシステムで、それら業務要件を満たすことできるのか、オーバースペックになっていないかなどを判断するようにしてください。

 

 

もし適切に業務が回っているのかの確認が難しい場合は、弊社介護サプリでお手伝いできるかもしれないので、一度ご相談ください。

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1 件の返信 (新着順)
ashiyanoshima
2024/11/17 09:35

弊社請求ソフトにも『記録』や『ケアプラン』、『利用料請求』『領収確認』などの付属機能が多岐にあるようです。しかし、オープンから14年目になりますが、『介護報酬請求』『自費請求⇒請求書・領収書作成』の機能しか使っていません。
PCを各フロアに設置するコスト(通信設備も含め)やセキュリティーの問題、何より職員が『PC入力は苦手です』という方が多かったからです。10年前の採用時面接等では求職者からの質問に『記録はパソコンですか?』という内容がけっこうありました。『手書きの記録ですよ』と回答すると笑顔になられていた方が多かった記憶があります。
スマホが普及してからはそのような話は減ったように思います。現在ではケア記録アプリを使用してタブレットで記録を入力していると伝えても、求職者の方からの反応は良くも悪くもありません。キーボード入力は抵抗があるようですが、スマホと同じように入力できるのであれば抵抗が内容です。
そのような時代の変化の中で、ケア記録アプリさんは現場スタッフに受け入れてもらいやすいと感じています。
で、弊社の請求ソフトで他機能を使用しない理由ですが、一番の理由は使い方が明らかにパソコンソフトだからです。スマホやタブレットのアプリと異なる仕様やウインドウの移動、機能がたくさんあることによってエラーが出た時にどこを直せばよいのかわからない状況になるため、使いこなすためのハードルが高いです。
もちろん、マニュアルは最初に受け取っていますが、書庫の一列の半分を埋め尽くすほどの量でどれを見たらよいのかわかりにくいくらいあります。なので使用する職員はマニュアル見るよりコールセンターへ電話で問い合わせます。
オープン時に担当者が説明に来てくれたのですが、主には介護報酬請求方法とそれに伴う利用者への請求方法等であとは『こんな機能もありますよ』と言われた記憶があります。その後1年間は出張相談が可能ですが、2年目以降は有償になるなどのサポート体制もあって(会社によってさまざまかと思いますが)、どの事業所さんも最初に設定した方法でやり続けることが一般的になっているのではないかと思います。
通信インフラや社会情勢、PCの性能などが変わってきた中でそれらに合わせて調整はされるのでしょうが、主となる『パソコンソフト』というコンセプトが今の時代や現場に即していないので、記録は記録、請求は請求という形でのICT化になっているのではないかと感じています。

長くなってしまいました。すみません。


やすば
2024/11/19 23:05

貴重なご意見ありがとうございます!

私が一番嫌なのは自分たちがしないことを他者にさせようとすることです。

国も大手介護ソフトメーカーもペーパレスや一体型を奨めてはいますが、はたしてその人たちは自分たちの業務に一体型のシステムを導入されているのでしょうか?その人たちはペーパレス化できているのでしょうか?

自分たち(国やソフトメーカー)はやらない(できない)けど介護現場はそうするべきだ、という根拠のないエゴを押し付けようとしているように見えるのです。

私たちはシステムの操作性やデザイン、仕様を考えるとき、必ず自分たちがユーザーだったらそれをお金を出してでも使いたいか、という視点で作っています。
1日の始まりに画面見るだけで瞬時にやる気が削がれるようなシステムには絶対にしません。
ashiyanoshimaさんの仰る「明らかなパソコンソフト」はただ業務要件が満たせるかどうかだけなので、謎のボタンだらけで使う側のことは何も考えられていません。。^^;

”自分が使いたいと思わないのにユーザーが使いたいと思うはずがない”作る側にはその観点をもってもらいたいですし、ユーザーには”それを導入すれば本当に自分たちは幸せになれるのか”を考えてシステムを選択していただきたいと心から思います。