知っ得コラム

ポジショニング・シーティングに使うクッションの種類|床ずれ予防と姿勢を整える選び方

大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 特任研究員 中井俊輔

2026.05.25(月)

介護の中で、「姿勢を整えること(ポジショニング)」はとても大切です。
座っているときだけでなく、ベッドで寝ているときの姿勢も、体への負担や床ずれ(褥瘡)に大きく関わります。
この記事では、座位と臥位の両方に役立つクッションの種類と使い方をご紹介します。


なぜクッションが必要なの?


同じ姿勢が続くと、体の一部に圧が集中してしまいます。
特に寝ているときは動きが少ないため、かかと・おしり・背中・肩などに負担がかかりやすくなります。

クッションを使うことで、

  • 圧を分散する
  • 体の傾きを整える
  • 楽な姿勢を保つ


ことができ、結果として床ずれ予防や快適さにつながります。


クッションの種類と特徴


種類
特徴
主な用途
ウレタン 
軽くて扱いやすい
姿勢保持(座位・臥位)
ゲル
圧をやさしく分散
床ずれ予防
エア
空気で調整可能
高い体圧分散
ビーズ
体にフィット
体のすき間埋め(臥位に◎)
ハイブリッド
複合素材
バランス型

座っているとき(座位)のポイント


座位では、骨盤が安定していることがとても重要です。

基本の考え方

  • おしり全体で体重を支える
  • 左右の傾きを防ぐ
  • 足がしっかり床につく


クッションの役割

  • 圧分散(床ずれ予防)
  • 骨盤の安定
  • 前すべりの防止

たとえば、エアクッションは圧分散に優れますが、不安定になる場合もあるため、姿勢が崩れやすい方には注意が必要です。


寝ているとき(臥位)のポイント


臥位では「体のすき間」と「圧が集中する部分」に注目します。
よく使うポジショニングを紹介します。

仰向け(背臥位)

  • かかとの下にクッション → 圧を逃がす
  • 膝の下にクッション → 腰の負担を軽減

横向き(側臥位)

  • 膝の間にクッション → 骨の当たりを防ぐ
  • 背中にクッション → 姿勢の安定

選び方のコツ


圧を分散するか、支えるか

  • 柔らかい → 圧分散に優れる
  • 硬め → 姿勢保持に優れる

体の状態に合わせる

  • 動けない方 → 圧分散重視
  • 姿勢が崩れやすい方 → 支持性重視

無理なく使えるか

  • 介助者が扱いやすいか
  • 日々の管理ができるか

お手入れ・管理も大切なポイント


クッションは選ぶだけでなく、日々の管理も大切です。
高性能なクッションでも、へたりや汚れがあると十分な効果が得られません。

ウレタンは長く使うと弾力が低下し、底付きしやすくなります。
エアクッションは空気量が合わないと姿勢が不安定になることがあります。
ビーズタイプも中材が片寄ると、支えたい部分に厚みが出にくくなります。

また、汗や失禁などで湿った状態が続くと、皮膚トラブルの原因になります。
カバーはこまめに洗濯し、清潔を保ちましょう。防水カバー使用時も、湿気がこもらないよう注意が必要です。

「以前より沈む」「傾く」「破れがある」「においが取れない」などは、交換や見直しのサインです。
毎日使うものだからこそ、定期的な点検と清潔管理が、安全で快適なケアにつながります。


少しだけ専門的なお話


研究では、「体圧を分散すること」と「姿勢を安定させること」の両方が大切だといわれています。

たとえば、エアクッションは圧を分散する力が高い一方で、柔らかすぎると姿勢が不安定になることがあります。逆に、少ししっかりしたクッションは姿勢を保ちやすく、

  • 呼吸がしやすくなる
  • 食事(嚥下)が安定する
  • 覚醒レベルが上がる


といった報告もされています。
つまり、「どれが一番いい」ではなく、その人に合っているかどうかが最も大切です。


まとめ


クッションは座るときも寝るときも、体をやさしく支えてくれる存在です。
少しの工夫だけで、床ずれの予防、姿勢の安定、日常生活のしやすさ向上につながります。

「なんとなく置く」から「意識を持って使う」へ。
それが、より良いケアへの第一歩となります。

迷ったときは、作業療法士や理学療法士などの専門職に相談するのもおすすめです。
無理なく、その人に合ったクッションを選んでいきましょう。


参考文献


  • 日本褥瘡学会:褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版
  • 厚生労働省:褥瘡予防・管理に関する指針
  • Sprigle S, Sonenblum S. Assessing evidence supporting redistribution of pressure for pressure ulcer prevention: a review. J Rehabil Res Dev. 2011;48(3):203-13.
  • Brienza DM, Geyer MJ. Understanding support surface technologies. Adv Skin Wound Care. 2000;13(5):237-44.




田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

中井俊輔
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 特任研究員

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