サプリの部屋

知っ得コラム

高齢者に多い転倒とその予防

大阪公立大学 准教授 田中寛之

2024.4.23(火)


高齢化が進む現在、4人に1人が高齢者となっており、転倒により骨折される方が増えています。要介護状態となる原因についてみると第1位は認知症で18.1%、2位は脳卒中で15.0%、3位は高齢による衰弱13.3%、そして転倒・骨折が第4位で13.0%となっています。

図1. 65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった主な原因
内閣府 令和3年版高齢社会白書 2.健康・福祉より引用

 


転倒の原因として


関連する危険因子として大きく2つに分けられます。
内的要因(身体的要因)と外的要因(環境)です。両者が相互に関連して発生する場合もあります。

① 内的要因は歩行能力・バランス能力、筋力、認知機能、神経機能、視聴機能の障害や薬の副作用などがあります。
② 外的要因(環境)は室内の段差や屋外の不整地などが挙げられます。


転倒場所として多いのが・・・


自宅で発生することが多いです。
その中でも多いのが庭・居間・リビングといった場所が大半を占めています。意外なのはいかにも転倒しそうな階段や浴室よりも、普段時間を多く過ごす慣れた場所での転倒が多いです。人間いかにも危ないところは気を付けるもので、慣れている環境だからこそ油断が生まれがちです。

特に生活スペースの中心となっている居間・リビングに物が散らかっていたりすると要注意ですね。


予防として重要なのは・・・


足腰の筋力・バランス強化により転倒しづらい身体をつくることと安全な環境を作ることが非常に重要です。

① 筋力・バランス力UP

足腰の力が弱ることで足が上がりづらくなったりふらついたりすることが増えます。そのような状態ではなおさら転倒リスクが高くなります。

転倒予防のために推奨されている運動は、椅子からの立ち座り運動、立った状態で足踏み運動、踵上げ(つま先立ち運動)等があります。壁や机に手をついて安全に行える環境で実施しましょう。1日10回2~3セット、週に4,5回実施するのが良いです。(痛みが出る場合は無理せず中止しましょう)

② 屋内の環境について

目に見える段差には意外と引っかかりにくいものです。
カーペットや座布団、電気コードに足をひっかけてしまう、落ちている紙を踏んで滑ってしまうような経験をされたことはないでしょうか?カーペットの端をテープ等で留める、滑り止めを付ける、コードはカーペットの下に通す・束ねる、床に紙や引っかかるものを置かない等の対策をしましょう。

自宅だけでなく施設や病院内での転倒も起きることがあります。
認知症等で危険認識が乏しい方に対しては下記の様な文字やイラストをベッドサイドに置いて注意を促すことも重要です。

その他にも車椅子や歩行器の使用者の方に対して、ベッドサイドの床にテープを貼り安全な停車位置を示すことで足の引っかかりなどの予防につなげることもできます。

また、屋外を歩く際には杖や押し車等の歩行補助具を持つことも大事です。つまずいてしまった際に杖や押し車があれば転倒に至らないケースもあります。屋外を歩く際に少しでも不安がある場合はそれらの使用をお勧めします。

転倒が大けがや寝たきりにつながる場合があります。小さな事からでも、予防を意識していきましょう。

〇参考・文献
内閣府 令和3年版高齢社会白書 2.健康・福祉
公益社団法人 日本理学療法士協会 理学療法ハンドブック シリーズ18 転倒予防


田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

コメントする