大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 鍵野将平
2026.04.27(月)
はじめに
近年、高齢ドライバーの交通事故が報道されるたびに、「免許返納」が話題になります。
家族や周囲の人から「もう運転はやめた方がいいのでは」と言われた経験のある方も少なくないでしょう。
一方で、運転をやめることは単に「車に乗らなくなる」という話ではありません。
地方や郊外では、車は買い物、通院、友人との交流など、日常生活を支える重要な移動手段です。
つまり、
「安全のために返納するべきか」
「生活のために運転を続けるべきか」
この二つの間で、多くの人が悩むことになります。
これがいわゆる「免許返納と運転継続のジレンマ」です。

なぜこの問題は難しいのか
この問題が難しい理由は、どちらを選んでもメリットとデメリットがあるからです。
下図のように、運転を続ける場合にも、免許を返納する場合にも、それぞれ利点と課題があります。

運転を続ければ、移動の自由が保たれ、生活範囲が広がり、社会参加を維持できます。
自分のタイミングで買い物や通院ができることは、安心感や自立感にもつながります。
特に長年運転を続けてきた人にとっては、車は単なる移動手段ではなく、「自分らしい生活」を支える大切な一部でもあります。
一方で、加齢による身体機能・認知機能の変化に伴う交通事故のリスクや、家族の不安といった課題もあります。
逆に、免許を返納すれば交通事故のリスクは減り、家族の安心につながります。
しかし見落とされがちなのが、返納後の生活や健康への影響です。運転をやめると外出機会が減り、生活範囲が縮小することがあります。
その結果、人と会う機会や活動量が減り、孤立やフレイルのリスクが高まる可能性があります。さらに近年の研究では、身体活動量の低下、抑うつ症状の増加、認知機能低下との関連も指摘されています。
また、この問題をさらに難しくしているのは、本人と家族の感じ方が一致しないことです。
本人は「まだ大丈夫」「事故を起こしたことはない」と感じていても、家族は同乗した際の不安や、運転場面での変化に気づいていることがあります。反対に、本人にとっては、運転をやめることが役割や楽しみを失うことにつながり、大きな喪失感になる場合もあります。
つまり免許返納は交通安全の観点では重要な選択肢である一方、生活や健康に影響を及ぼす可能性もある決断なのです。
そのため、この問題は単純に「返納するか」「運転を続けるか」という二択ではなく、安全と生活のバランスをどう取るかという視点で考えることが重要になります。
「返納するか」ではなく「どう準備するか」
そこで最近注目されている考え方が、「運転終活」です。
終活というと「やめる準備」のように聞こえるかもしれませんが、ここでいう運転終活は「運転に頼りすぎない生活を少しずつ準備していくこと」を意味します。
例えば、
• 近くのスーパーや病院を歩いて確認してみる
• バスや電車の使い方を練習してみる
• 家族と送迎の役割を相談する
• 予約制の乗り合い送迎(デマンド交通)やタクシーなど地域の移動サービスを知る
こうした取り組みを、まだ運転できるうちから始めておくことが大切です。
そうすることで、将来運転をやめる時が来ても、生活への影響を小さくすることができます。
また、こうした準備は本人だけで抱え込むものではありません。
家族、医療・介護の専門職、地域包括支援センターなどが関わりながら、「今はどのように移動しているか」「今後どんな支援があれば暮らしを維持できるか」を一緒に考えていくことが重要です。
運転の問題を、単なる免許の話ではなく、生活設計の一部として捉える視点が求められます。

大切なのは「納得できる選択」
免許の問題は、「返納するか」「続けるか」という二択で語られがちです。
しかし本当に大切なのは、本人が納得して選択できることです。
安全と生活のバランスを考えながら、家族や専門職、地域の支援者が一緒に考えていくことが重要です。
運転の問題は、対立するテーマではなく、これからの生活をどうつくるかを考える機会とも言えるでしょう。
「危ないからやめる」だけではなく、「やめた後もその人らしく暮らせるか」という視点まで含めて考えることが、これからますます大切になります。

おわりに
高齢社会の日本では、これから多くの人が「運転をどうするか」という問題に向き合うことになります。
免許返納はゴールではありません。
大切なのは、運転を含めた「その人の移動」と生活をどう守るかという視点です。
そのために、地域の中で移動について早めに話し合う文化をつくっていくことが、これからますます重要になるでしょう。
「まだ乗れるか」だけではなく、「乗らなくなっても暮らしていけるか」を考えることが、安心して年齢を重ねるための大きな鍵になるのではないでしょうか。

田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

鍵野将平
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示6年前の夏、父親が79歳の時、実家に帰る度に父が運転する車を見るとどこかで擦ったようなキズが増えてきたなと思ってたある日、父がスーパーの駐車場でヨソの車と接触事故を起こしました。
(その前にも車屋(ボクの中学時代の同級生)から“一応友達として言うとくわ”と前置きして、父がドアミラーをどこかでぶつけて落としてきたからと修理の依頼があったと・・・、普通に対応して修理して納車したけど、どこでぶつけたか憶えてないと言っていたので心配になったからとのタレコミがありました💦)
事故自体は幸いケガ人もなくて保険対応して表面的には無事に済んだのですが、まあガチャガチャあったので、免許返納の話をしましたが当然すんなり応じることもなかったので、80歳になったら
という約束を一応しましたが、守られることもなく(本人は「んなモン言うてへん!!」の一点張り💦)、もう一年だけ猶予するとだけ伝えて、一年後、父81歳の時に、車を没収しました。
その後、ブツブツ言っていましたが新たに車を買うこともなく、歩いて母と買い物に行ってます。重い荷物の時や、真夏の炎天下には出戻りの姉に乗せてもらって行ってるようです。
ちょっと強引でしたが、聞く聞かん・・・理解してるしてへんは別として、一応ちゃんと説明して、段階は踏んだつもりです。
今は車の無い生活にもなれたのか、まあまあ物忘れ・・・っていうか軽い認知症状もありますが、毎日一人で散歩に行って帰って来れてるので良かったかなと。。。
全然参考になりませんけど・・・💦笑笑。