サプリの部屋

知っ得コラム

認知症の予防って何ができるの? 認知症シリーズ

大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 後迫春香

2024.12.23(月)

認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態です。

今回は、認知症を予防するためにどのようなことに気を付けるべきか、世界で行われてきた研究結果も交えながらお伝えします。


認知症の危険要因


2024年に発表された研究の結果では、認知症に関連する危険要因として、表1の15項目が挙げられています。これらの危険因子に対して介入して修正することで、最大45%について発症を遅らせたり、発症を予防する効果が期待できるとされています。驚いたかもしれませんが、認知症の予防の多くは45歳くらいから始まります。いわゆる生活習慣病の予防とも似ている項目が多いです。

年齢 危険因子
45歳未満 教育水準の低さ
45歳~65歳未満 難聴・頭部外傷・高血圧・過度の飲酒・肥満・高LDL
コレステロール・運動不足・糖尿病・喫煙・うつ病
65歳以上 視力低下・社会的孤立・大気汚染

表1 認知症の危険要因 (Livingston Gらのグループによる)


アルツハイマー型認知症の予防


アルツハイマー病協会では、最新の研究に基づいて認知症リスクを軽減するための「10 Ways to Love Your Brain」(あなたの脳を愛する10の方法)を示しています。こちらの10項目では、上記の危険要因項目に加え、新しいことに挑戦すること、頭を守ること、正しい食事をとること、よく眠ることなども推奨されています。

項目 解説
チャレンジ精神 好奇心を持つ。頭を働かせて、自分にとって新しいことをする。新しい技術を学ぶ。芸術的なことに挑戦する。
学校に通い続ける 教育は認知機能低下や認知症のリスクを減らす。
体を動かす 定期的に運動をする。心拍数を上げ、脳や体への血流を増やすような運動が効果的。ウォーキング、ダンス、ガーデニングなど
頭を守る 頭のケガを防ぐ。特に高齢者の場合は、転倒を防ぐためにできることをする。
禁煙する 禁煙することで、認知機能低下のリスクを喫煙していない人と同じレベルまで下げることができる。
血圧のコントロール 薬、正しい食事や運動などの健康的な習慣が役立つ。
糖尿病の管理 2型糖尿病は、より健康的な食生活を送り、運動量を増やし、必要に応じて薬を服用することで予防またはコントロールが可能。
正しい食事 野菜を多く摂り、肉やタンパク質の赤身を多く摂り、加工食品が少なく脂肪分の少ない食品を摂ることが大切。
健康的な体重を維持する 健康的な体重について、かかりつけの医師に相談しましょう。健康的な体重を維持するためには、健康的な習慣(正しい食事、運動、睡眠)が役立つ。
よく眠る 寝る前のスクリーン(スマホ・パソコン)は控え、できるだけ快適な睡眠空間を作る。

表2 あなたの脳を愛する10の方法
アルツハイマー病協会 10 Ways to Love Your Brainより翻訳・一部改変


生活習慣の改善


今回ご紹介した項目の中には、「過度の飲酒」「喫煙」「運動不足」「食事」「睡眠」などの生活習慣、および「高血圧」「肥満」「糖尿病」などの生活習慣病が含まれています。

つまりは、過度な飲酒を控える、禁煙する、定期的な運動習慣を身につける、バランスのよい食事を心がける、睡眠環境を整えるといった生活習慣の改善が重要となります。


新しいことへの挑戦


「あなたの脳を愛する10の方法」で挙げられている、「新しいことに挑戦すること」も認知症予防に有効といわれています。

年齢を重ねるにつれ、新たなことへの挑戦は億劫になるもので、具体的に想像することが難しい方もいらっしゃるかもしれません。そんな方々には、いつもと違う道を通ってみたり、通りがかった施設や催し物を覗いてみたり。そんな些細なことからでも、普段と違うことやものに触れる機会を設けて頂くことをおすすめします。

普段と違った少しの行動が、脳に刺激を与え、認知症予防につながりますので、ぜひ意識してみてはいかがでしょうか?

○参考・文献

Livingston G et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024 Jul 30;S0140-6736(24):01296-0.

アルツハイマー病協会HP 「10 Ways to Love Your Brain」
https://www.alz.org/help-support/brain_health/10-healthy-habits-for-your-brain

 


田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

 

後迫春香
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生

 

 

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