知っ得コラム

リハビリってどんなことをやるの? Vol.1 〜肩や膝の痛みに対して行うリハビリの実際〜

医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁

2025.10.14(火)


「リハビリ」と聞くと?


今までのコラムで、リハビリはとても大事ですよ!とお話ししてきました。
実際の診察でも患者さんやご家族からよくいただく質問に、「リハビリって具体的に何をするんですか?」というものがあります。 

「運動をすること?」「マッサージのようなもの?」「体操みたいな感じ?」――このように人によってイメージはさまざまです。

実際のリハビリは、ただ筋肉を鍛えるだけではなく、 
① 痛みを和らげる 
② 関節の動きを取り戻す 
③ 生活の動作をスムーズにする 
といった複数の目的を持ちながら進めていきます。

何回かに分けて詳しくお話ししていこうと思います。

今回は、肩や膝など関節の痛みに対してよく行われるリハビリの内容を、わかりやすくご紹介します。


1. 関節の可動域を広げる運動(ストレッチ)


痛みがあると人は自然と動かさなくなります。すると関節が固まり、「動かしたいのに動かせない」という悪循環に陥ります。 
そこで重要なのが可動域訓練(かどういきくんれん)です。

  • 肩では、タオルを背中に回して上下に動かす「タオルストレッチ」 
  • 膝では、椅子に座って膝を伸ばす、足をゆっくり曲げ伸ばしする運動

といった方法で、固まった関節を少しずつ動かせるようにします。 
「痛くない範囲で」「毎日コツコツ」がポイントです。


2. 筋肉を鍛える運動(筋力トレーニング)


関節を守るのは筋肉です。筋肉が弱くなると関節に負担がかかり、痛みも悪化します。 
リハビリでは、関節に無理をかけない範囲で筋肉を鍛える運動を行います。

  • 肩の場合:
     ゴムバンドを使った肩周囲の筋肉のトレーニング、壁に手をついて押す運動 
  • 膝の場合:
     椅子に座って膝を伸ばす「膝伸ばし運動」、仰向けで足を少し浮かせる「太もも前側の筋肉トレーニング」 

特に高齢者にとっては「自分の体重を支える筋力」が日常生活を支える基盤になります。筋トレといっても激しいものではなく、軽い負荷をゆっくり継続することが大切です。


3. 痛みを和らげるための物理療法やマッサージ


リハビリ室では、運動だけでなく「物理療法」と呼ばれる方法も取り入れられます。 

  • ホットパックで温めて血流を良くする 
  • 低周波治療器で筋肉をほぐす 
  • 超音波治療で炎症や痛みを和らげる
  • 手やマッサージ器具を使用してほぐすこともあります

これらはあくまで補助的な手段ですが、「痛みが和らいで動かしやすくなる」ことで、リハビリの効果が高まります。

これらは気持ちよく、やってもらった直後はとても楽になります。しかし!厳しいことを言うと、患者さんの中にはリハビリの担当者(理学療法士や作業療法士。セラピストとも呼ばれます)をマッサージ屋さんと勘違いしていて、運動療法ができるタイミングになっても「トレーニングはいらない。マッサージだけでいいよ〜」と言われる方もいます。あくまでセラピストも医師もサポーターであり、自分の体を治すことは受け身では成立しません。

ご自身の体を改善していくのは他ならぬ患者さん自身です。我々はその伴走者としてお手伝いをします。


 4. 日常生活の動き方指導


リハビリの目的は「痛みを取る」だけではなく、普段の生活をより快適にすることです。 

そのため、日常動作の中で「体に負担をかけない動き方」を指導するのも大切なリハビリの一部です。

  • 肩が痛いときは、腕を真横から上げるよりも前から持ち上げる方が負担が少ない。肩関節だけでなく、背骨や股関節にも、しっかりと力を入れて動かす。 
  • 膝が痛いときは、椅子から立ち上がる際に「手を太ももに添えて支える」と楽に立てる。膝だけでなく、お尻周りや足周りも鍛えることで膝の負担を減らす。

こうした工夫は、介護者にとっても転倒や無理な動作を防ぐヒントになります。


5. 注射や薬とリハビリの関係


湿布や痛み止め、ヒアルロン酸注射やステロイド注射は、痛みを和らげるために有効な治療です。 

しかし、それだけで完結させてしまうと、動かさないまま時間が過ぎ、関節が硬まってしまったり、根本原因が解決されないままとなり、再発を繰り返してしまいます。

痛み止めの薬や注射はあくまで現状の緩和であり、「痛みが落ち着いている間にリハビリで根治させる」ことが非常に重要となります。3の物理療法、マッサージと同様ですね。

「薬や注射で痛みを和らげ → リハビリで動きを取り戻す」
この順番で治療を組み合わせることが、回復の近道です。


6. 手術後のリハビリ


もし手術が必要になった場合も、リハビリは欠かせません。 
例えば肩の腱板修復術や膝の人工関節置換術の後には、術後すぐにリハビリを始めて、再び動かせるようにすることが成功のカギとなります。 

手術は「スタートライン」であり、リハビリを続けることで初めて機能が回復していきます。


まとめ


「リハビリ」とは、

  • 関節を動かしやすくする 
  • 筋肉を強くして関節を守る 
  • 日常生活を楽にする工夫を取り入れる 

この3つを目的とした総合的な取り組みです。

湿布や痛み止め、機械の治療やマッサージも役立ちますが、それだけでは十分ではありません。

「様々な手段で痛みを抑えて、リハビリで機能を回復する」この組み合わせこそが、元気に生活を続けるための最も大切な道です。

リハビリは地道な取り組みですが、続ければ確実に成果が現れます。 
「今日は少し動かせた」「昨日より楽に立てた」――その積み重ねが、生活の質を大きく変えていくのです。 

次回からリハビリの具体的な方法についてもお話ししていきたいと思います。

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