サプリの部屋

知っ得コラム

気をつけたい、生活習慣病と認知症

大阪公立大学 准教授 田中寛之
大阪公立大学 大学院生 天眞正博

2024.06.24(月)


認知症を予防する生活習慣のポイント


認知症の発症には、発症リスクを高めるものと発症リスクを下げるものがあります。
発症リスクを高めるものには年齢や遺伝など変化させることが難しいものもありますが、日頃の生活習慣を見直すことで改善できるものもあります。

それらを改善することで認知症の発症を予防できる可能性があります。

下の図は認知症の発症リスクを高める可能性があるものをまとめたものとなっており、教育歴、聴力の低下、高血圧、肥満、うつ、身体を動かさない、家族やコミュニティと接触がない、2型糖尿病の9つが挙げられています。


① 運動習慣と趣味


認知症の発症リスクを高めるものの中でも特に身体を動かさないことは、認知症の原因の一つであるアルツハイマー病の発症に関わっていることがわかっており、日頃から身体を動かす習慣をつけることは、認知症を予防するためにとても重要となってきます。

具体的な習慣としてはウォーキングやサイクリング、筋力トレーニングなどがあります。

これらを週3回以上行う習慣がある人は習慣がない人よりも認知症の発症リスクが低かったことがわかっています。このことから、身体を動かし活動的な生活を過ごすことが認知症の予防には大切です。

また運動習慣以外にも生活習慣として趣味を持つことも重要です。
具体的にはボードゲームや読書、楽器演奏を行う頻度が多い人は認知症の発症リスクが低いことがわかっています。

最近では脳トレゲームやスマホのアプリなどで認知訓練をしても、訓練をしなかった群よりも「認知機能の改善」が認められています。なお、このようなゲームの実施時間は・頻度は各研究によっても異なるのですが、ある研究では、1日1時間、週4回、6週間にわたって実施すると認知機能が改善することが報告されました。ただ、この結果だけで「ゲームをすればよい!」という簡単な解釈ではなく、ゲームを楽しくできているのかなど、本人の興味関心があるのかも大切です。そして、ゲームをしすぎるのも視力の低下や運動不足にもなりかねませんので、何事もほどほどに、楽しんでできることが良いでしょう。


② 運動と認知の組み合わせのエクササイズ


他にも、認知機能への働きかけを意図した運動もあります。
それは、国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算課題・しりとりなど)を組み合わせたコグニサイズというものです。コグニサイズは認知(Cognition)と運動(exercise)を組み合わせた造語です。
YouTube内でも多くの動画が掲載されています。

運動は全身を使った、軽く息が弾む程度の負荷で、同時に、認知課題はたまに間違えてしまうくらいの少し頭の中で考えないといけない程度の課題の難易度が良いとされています。そして、一人で黙々とするよりも、誰かと一緒に楽しくすることも重要です。


③ 食事と嗜好品


食事では脂質やビタミンを摂ることが、認知症の発症予防の効果があると考えられています。

特に魚類に含まれる不飽和脂肪酸、鶏肉や穀物に含まれるビタミンB、そしてオリーブオイルを使用した地中海の料理などは認知症の発症リスクを下げる可能性があります。

日本では和食で使用される豆類、野菜類、海藻類、乳製品を多く含む食事が認知症の発症リスクを下げると考えられています。

次に嗜好品であるタバコは認知症の発症リスクを高めることが知られていますが、喫煙をしているかだけでなく、喫煙本数が多く、喫煙歴が長い人は認知症の発症リスクが高くなる可能性があります。

このように、生活習慣に関係する多くのことが認知症の発症に関わっていることから、発症リスクを高めるものを減らし、発症リスクを下げるものを増やして生活習慣を確立することが、認知症の発症を予防するうえで重要になってきます。

まずは、明日から何ができるかな、何だったら継続しやすいかな、と自分なりに考えて生活習慣を改めてみるのも良いと思います。

 


田中寛之(Tanaka Hiroyuki)
大阪公立大学 医学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 准教授
高齢者・認知症の人の認知機能や生活行為などの医療・介護現場での臨床と研究に従事。
2020年より、弊社と認知症グッドプラクティスシステムの共同研究開発を実施中。

 

天眞正博
大阪公立大学大学院 リハビリテーション学研究科 大学院生

 

 

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1 件の返信 (新着順)
やすば
2024/11/05 10:49

わたしは50歳を目前に生活習慣を見直しました。主には食生活と運動です。

年齢とともに基礎代謝も落ちているので、若い人以上にそれらを努力で補う必要があります。
といっても日課にしてしまえばそれほど大変さは感じていません。

継続は力です。無理せずたまには飲み会などのご褒美も自分に与えながら、コツコツと努力をすることが大事です。

これが認知症の予防にもつながっていると思うと嬉しいですね。