高齢者の足の健康と靴選び(前編)
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁
2025.01.14(火)
高齢者にとって足の健康は、日常生活を快適に過ごすための重要な要素です。歩くことは移動だけでなく、運動や社会的活動の基盤となります。しかし、加齢に伴う体の変化や病気の影響で、足のトラブルを抱える方が増えています。特に糖尿病による足のトラブルは注意が必要です。
また、日常生活の中で適切な靴を選び、足をケアすることが転倒防止や快適な歩行につながります。本稿では、高齢者が足の健康を保ちながら安全に生活するための靴選びのコツや注意点を詳しく解説します。
目次:
✅️ 1. 足の変形や痛みが引き起こす問題
✅️ 2. 高齢者に適した靴の選び方とポイント
3. 足のケアを怠ると起こるトラブルとその予防法
4. 整形外科での足の診断とインソールの活用
5. 屋内外で安全に歩くための工夫
6. 足のトレーニング
1. 足の変形や痛みが引き起こす問題
高齢者の足は、加齢や長年の使用による変化で問題が生じやすくなります。また足は体重をかけざるを得ない部位なので安静にすることが難しく、あまり長期間放っておくと改善に非常に長い時間が必要になったり、不可逆の変形を引き起こす事があります。
以下は高齢者に多く見られる足のトラブルと、それによる影響です。
(1)外反母趾
外反母趾は、親指が内側に曲がり、靴に当たって痛みや炎症を引き起こす状態です。特に、若い頃に先の細い靴やハイヒールを履いていた方に多く見られます。痛みが進行すると、歩行が困難になり、日常生活に支障をきたします。最終的には手術が必要となる方もいますが、エクササイズや後述のインソールが有効な場合もあります。
(2)足底筋膜炎
足底筋膜炎は、足の裏を支える筋膜が炎症を起こし、かかとに痛みを感じる症状です。「起床時の一歩目や立ち上がってからの一歩目が痛い」というのが特徴的な症状です。長時間立つ、硬い床で歩くなどが原因となります。適切な靴を履かないと症状が悪化し、歩行が制限されます。
(3) 偏平足
偏平足は、筋力の低下や腱の慢性的な損傷により足のアーチ(土踏まず)が低くなる状態です。これにより足全体に負担がかかり、膝や腰に痛みを引き起こすこともあります。偏平足の方は、足に合わない靴を履くと、さらに症状が進行する可能性があります。外反母趾とも深い関係があり、早め早めの運動療法や装具療法が重要です。
(4) たこ・うおのめ
たこ(胼胝・べんち)やうおのめ(鶏眼・けいがん)は、靴の圧迫や摩擦によって皮膚が硬化してできるものです。特に感染を伴うと痛みがあり、歩行時に不快感を覚える原因となります。整形外科でも対応される先生もおりますが、基本的には皮膚科がご専門となります。
(5)糖尿病性足病変
糖尿病を患う方は、血流が悪くなりやすく、足の感覚が鈍くなる場合があります。このため、小さな傷や靴ずれに気づかないまま放置し、感染症や潰瘍(かいよう)を引き起こすことがあります。最悪の場合、足の切断に至ることもあります。
内科、整形外科、皮膚科、循環器科など、総合的な治療が必要になりますので、重症化しないように日々のチェックをしましょう。
(6)足以外の部位への影響
足は地面からのストレスを一身に受ける部位です。そのため前述のような足の変形や機能不全があると膝、股関節、腰などにも痛みが出ることがあります。
トラブルを未然に防ぐためには、足に合った靴を選び、日常生活でのケアを徹底することが大切です。

2. 高齢者に適した靴の選び方とポイント
靴選びは単なるファッションではありません。特に高齢者にとっては、靴が足を守り、快適な歩行を支える重要な要素です。以下に、高齢者が靴を選ぶ際に注意すべきポイントを詳しく解説します。
(1)サイズの確認
靴のサイズが合わないと、靴ずれやたこ、外反母趾などの原因になります。足は一日の中で多少むくむため、靴を試着する際は午後の時間帯に行うと最適なサイズが分かります。また、つま先に1cm程度の余裕があり、かかとがしっかりホールドされる靴を選びましょう。
(2)靴底の安定感
高齢者が転倒しないためには、靴底の滑りにくさが重要です。ゴム製や滑り止め加工が施された靴底を選び、柔軟性があり衝撃を吸収するものを選ぶと良いでしょう。硬すぎる靴底は足に負担をかけるため避けましょう。
(3)脱ぎ履きのしやすさ
高齢者は関節が硬くなり、靴の脱ぎ履きが難しいことがあります。マジックテープやゴム製のストラップが付いている靴は、簡単に調整ができるため便利です。また、靴ひもタイプの場合は、ゴムひもを使用すると締め直す手間が省けます。
(4)通気性の良い素材
足は汗をかきやすいため、通気性の良い素材の靴を選びましょう。蒸れを防ぐことで、細菌や真菌(カビ)が繁殖しにくくなり、水虫や感染症を予防できます。
(5)軽量であること
高齢者にとって、靴の重さが歩行の負担になります。軽量な靴を選ぶことで、足や膝、腰への負担を軽減し、疲れにくくなります。特に外反母趾や偏平足の方には、軽量でクッション性のある靴がおすすめです。ただやわらかければいいというわけでもなく、それぞれの足型や背格好に応じての向き不向きがあります。靴そのものをオーダーメイドで作成することは難しいので、後述のオーダーメイドインソールを診療ではお勧めすることが非常に多いです。

次回「3.足のケアを怠ると…〜」は2月3日(月)に掲載予定です。お楽しみに!
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富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。