【高齢者のためのやさしいリハビリ】肩編vol.2
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁
2025.01.13(火)
〜ゴムバンドで安全にできる“インナーマッスル”トレーニング〜
はじめに
肩の痛みで整形外科を受診される方の多くが、「インナーマッスルって何ですか?」「鍛えたほうが良いんですか?」と質問されます。
インナーマッスルとは、簡単にいえば“肩を安定させるための深い筋肉”のことです。
具体的には、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つで、これらをまとめて腱板(けんばん)と呼びます。
日常生活で意識しにくい筋肉ですが、
●腕を上げる
●物を持つ
●痛みなく肩を動かす
ためには欠かせない存在です。
腱板が弱ると、肩は不安定になり、五十肩の悪化、腱板断裂、慢性的な痛みなどにつながることがあります。
そのため、肩のリハビリではインナーマッスルを安全に鍛えることが治療の中心になります。
今回は、家庭でもできるように、ゴムバンドを使ったインナーマッスルの代表的なトレーニングを3種類ご紹介します。
トレーニング用のしっかりしたものもありますが、100円ショップでも販売されていますので、まずは廉価なものを購入されると良いかと思います。
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高齢者の方でも無理なく行える内容に調整していますので、ぜひ肩の健康づくりにお役立てください。

インナーマッスルを鍛える目的
インナーマッスルの役割は「肩を動かす」ことよりも、肩を“安定させる”ことです。
そのため鍛え方にも特徴があり、
・強い負荷は不要
・ゆっくり、確実に
・痛みの出ない範囲で
・回数で勝負(軽い負荷 × 中〜高回数)
というのが基本ルールです。
スポーツ選手も必ず行うトレーニングですが、高齢者の方でも安全に実施できます。
むしろ年齢を重ねてからこそ、肩の安定力を保つために重要になります。
自宅でできる「ゴムバンド・インナーマッスルトレーニング」3種類
すべて椅子に座ったままでも行えます。
① 外旋(がいせん)トレーニング
目的:棘下筋・小円筋を鍛えて、肩の安定性を高める
- 脇を軽く締め、肘を90度に曲げる。
- ゴムバンドを軽く張った状態で持ち、腕を外側へゆっくり開く。
- 肘は体側につけたまま、手だけを外へ動かす。
- 一番外に開いたところで1〜2秒キープし、ゆっくり戻す。
10〜15回 × 2〜3セット。
◯ポイント
・痛みのない範囲で動かす
・胸を張りすぎず、肩をすくめない
・動作は「ゆっくり」が鉄則
② 内旋(ないせん)トレーニング
目的:肩甲下筋を鍛えて肩前部の安定性を高める
- 外旋と同じ姿勢でスタート。
- 今度はゴムバンドを外側に固定し、腕を体の内側へ引き寄せる。
- 脇を軽く締めたまま、肘を支点にして動かす。
- 最後に1秒キープして戻す。
10〜15回 × 2〜3セット。
◯ポイント
・外旋とセットで行うとバランスが良い
・肩を前に出さない
・反動を使わない
③ 肩甲骨セット(ローイング)
目的:肩甲骨の安定性を回復し、腱板が働きやすい土台を作る
- 背筋を伸ばして座る(立って行っても可)。
- 両手でゴムバンドを持ち、軽く張った状態で腕を前へ伸ばす。
- ゆっくり肘を後ろに引くようにして、肩甲骨を寄せる。
- 2秒キープして戻す。
10〜12回 × 2セット。
◯ポイント
・肩をすくめない
・胸を張りすぎず、あくまで自然な姿勢で
・腕だけで引かない。肩甲骨から動かす意識が大切
リハビリ効果を高めるコツ
インナーマッスルは「地味」な筋肉ですが、効果が出てくると肩の動きがとても軽くなります。
継続のために、以下のポイントも意識してください。
・毎日少しずつ続ける
・負荷は軽めで十分(強度を上げる必要はほぼありません)
・痛い日は無理せず、ストレッチだけに変更する
・入浴後など体が温まっている時間帯に行うと効果的
肩のリハビリは「痛みと相談」「積み重ね」が大切です。
特に高齢者の方は、急に頑張りすぎるとかえって痛みが出やすいため、無理のない範囲で継続しましょう。

おわりに
湿布や痛み止めは、痛みを和らげる“補助役”としてはとても良い方法です。
しかし、それだけで肩が根本的に治るわけではありません。
肩を安定して動かすためには、やはりインナーマッスルを働かせていくことが欠かせません。
今回紹介したゴムバンドトレーニングは、病院のリハビリでも頻繁に行われる、エビデンスのある基本メニューです。
「難しい運動はできない」という高齢者の方でも、安全に取り組みやすい内容になっています。
ぜひ、ご自宅でのセルフケアの一つとして取り入れてみてください。
肩の動きが軽くなり、日常生活がぐっと楽になります。
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富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。