【高齢者のためのやさしいリハビリ】肩編vol.1
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁
2025.12.08(月)
〜固まる前に、動かして守る。肩を支えるリハビリの基本〜
はじめに
高齢者の方に起こりやすい肩の疾患については、以前のコラムでも触れてきました。
📝 五十肩って何?〜つらい肩の痛みとの付き合い方〜 前編
📝 高齢者の肩の痛みは五十肩だけじゃない 〜腱板断裂・石灰性腱炎など見逃されやすい肩の疾患〜 後編
原因はさまざまありますが、どの疾患にも共通して言えるのは「動かさなければ良くならない」ということです。
もちろん、闇雲に動かせばいいわけではありません。
痛みの程度や可動域、炎症の状態に合わせて、“正しい順序で”“安全に”動かすことが、医療的リハビリの本質です。
今回は、高齢者の方でもご自宅でできる肩の基本エクササイズを中心に、リハビリの考え方をご紹介します。

肩のリハビリの目的
リハビリの目的は大きく3つあります。
- 関節の動きを取り戻すこと(可動域改善)
- 肩甲骨や体幹を含めたバランスの回復(姿勢改善)
- 筋肉を再教育して再発を防ぐこと(安定性強化)
つまり、ゴールは「鍛えること」ではなく、「正しく使えるようにすること」です。
肩は腕だけでなく、肩甲骨や背中・体幹と連動して動くため、どこか一部が硬いと他の部分に負担がかかり、再び痛みが出やすくなります。
リハビリの基本原則
肩を動かす際に大切なのは次の3つです。
- 痛みのない範囲で動かす
- ゆっくりと、呼吸を止めずに行う
- 「気持ちいい伸び」を目安にする
強い痛みを我慢して行うと、炎症が悪化することがあります。
リハビリは“頑張るもの”ではなく、“慣らしていくもの”と考えてください。
自宅でできる肩の基本エクササイズ
ここからは、ご自宅でできる3種類の基本運動を紹介します。
継続することで肩こりや腰痛の改善だけでなく、眼精疲労にも効果があります。要介護者の方だけでなく、介護をする側の方々にもぜひおすすめです。
今回必要なもの: タオルのみ!
① ストレッチ(肩全体の可動域改善)
目的:肩関節の動きと肩甲骨の連動を促す
- 背筋を伸ばして座る。両手でタオルの端を持つ。
- 息を吐きながら、ゆっくりと頭の上に持ち上げる。
- 痛みのない範囲で軽く胸を張り、5秒キープ。
10回×2セット。
※痛みが強い日は無理をせず、動かす範囲を小さくします。
② 肩甲骨よせ運動(姿勢改善・肩こり予防)
目的:背中の筋肉を働かせ、猫背姿勢をリセット
- 椅子に浅く座り、胸の前でタオルの端を持つ。
- 胸を張るようにして、肩甲骨を背中の中央に寄せる。
- 5秒キープして戻す。
10回×2セット。
※肩をすくめると効果が半減します。首の力は抜いて。
③ 回旋エクササイズ(肩〜体幹の強化)
目的:ねじり動作で使う腹筋と背筋(腹斜筋〜広背筋)を活性化
- 椅子に浅く座り、胸の前でタオルの端を持つ。
- 姿勢が丸まらないように、右に体をねじり、無理のないところで止めて深呼吸を2回行う。
- 正面に戻り、左側も同様に行う。
左右のねじりで1回とし、3回×2セット。
④ 壁押しエクササイズ(前鋸筋・三角筋の強化)
目的:腕を支える筋肉の再教育と安定性の向上
- 壁に向かって立ち、両手を肩の高さで壁につく。
- 肘を軽く曲げながら、体を壁に近づける。
- 背中と肩が丸まらないように注意しながら、ゆっくり押し返す。
10回×2セット。
※床で腕立て伏せが難しい方でも、安全に同じ筋肉を働かせることができます。
リハビリを続けるコツ
- 「痛くない範囲で、毎日少しずつ」が原則です。
- 行う時間帯はいつでも構いませんが、朝一は体が硬いため、準備運動をするか強度を軽めにしましょう。
- 回数はあくまで目安です。体力や体調に合わせて調整してください。
「昨日より1cm上がった」「着替えが楽になった」など、
小さな変化に気づくことが、継続のモチベーションになります。
おわりに
湿布や痛み止めは一時的な助けにはなりますが、
本当に肩を良くするのは“自分で動かす力”です。
リハビリは、“痛みを我慢して頑張ること”ではなく、“体を取り戻していく過程”です。
焦らず、毎日の生活の中に少しずつ取り入れていきましょう。
「動かして治す」——それが肩のリハビリの第一歩です。
一人ひとりに合わせたトレーニングやリハビリに興味がわいた方はぜひお近くの整形外科にご相談ください。
次回の肩編vol.2ではバンドを使った肩の安定性を整えるトレーニングをご紹介します。