医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁
2026.06.08(月)
はじめに
「朝、起き上がるときに腰が痛い」「動いているうちに少し楽になる」
これらは整形外科の外来で、非常によく聞く症状です。
一方で、日中は比較的動けるため、「年齢のせいかな」「寝方が悪かっただけかも」と様子を見ている方も少なくありません。
しかし、朝の腰痛には“理由”があります。
そしてその多くは、生活習慣や体の使い方が関係しています。
今回は、「なぜ朝に腰が痛くなるのか?」をテーマに、原因や対策について分かりやすく解説します。
なぜ“朝”に腰が痛くなるのか?
腰痛にはさまざまな原因がありますが、起床時の痛みには共通点があります。
それは、
「長時間動いていない状態から急に動く」
ということです。
睡眠中は、数時間同じ姿勢が続きます。すると、
・筋肉が硬くなる
・関節の動きが悪くなる
・血流が低下する
といった変化が起こります。
特に高齢者では、加齢に伴って筋肉や関節の柔軟性が低下しているため、“朝のこわばり”が出やすくなります。
その状態で急に起き上がると、硬くなった筋肉や関節に負担がかかり、「痛み」として感じやすくなるのです。

「動くと楽になる」は重要なヒント
朝は痛いのに、動いていると少し楽になる。
これは、起床時腰痛で非常によくみられる特徴です。
理由はシンプルで、動くことで
・血流が良くなる
・筋肉が温まる
・関節が滑らかに動く
ようになるためです。
つまり、「動いて悪化する」のではなく、“動かない時間が長いと痛くなる”タイプの腰痛ということです。
このタイプでは、「安静にしすぎる」ことで、かえって悪循環になることがあります。
実は多い「筋力低下」と「体の硬さ」
起床時腰痛の背景として非常に多いのが、
・体幹筋力の低下
・股関節の硬さ
・お尻や太ももの柔軟性低下
です。
腰は、本来それ単独で頑張る場所ではありません。
股関節やお尻、腹筋などが協力して支えることで、腰への負担を分散しています。
しかし、筋力が低下すると、腰ばかりが頑張る状態になります。
すると、寝ている間に固まった腰へ、朝一番で大きな負担が集中してしまうのです。
寝具や就寝環境は関係ある?
意外と寝具にまで目を向けられている方は多くありません。
使い方や寝具の種類にもよりますが、一般的な耐用年数は8〜10年程度とされています。
それ以上使用している場合、寝具の機能が低下し、それによる腰痛が出ている可能性もあります。
また、寝返りには、同じ場所へ負担が集中するのを防ぎ、体へのストレスをリセットする役割があります。
無意識下のことなので難しいのですが、
・室温が快適か
・枕の高さや硬さが合っているか
といった環境も重要です。
たまに「私は寝返りしないので、、」とおっしゃる方もいますが、安心してください。
回数の差はありますが、基本的には皆さん寝返りをしています。
・寝具の耐用年数
・ベッドルームの室温や湿度
こうした点に目を向けてみてください。

朝の腰痛を減らすコツ
① 起き上がる前に少し動く
いきなり勢いよく起き上がるのではなく、まずは膝を軽く動かしたり、腰をゆっくり左右に倒したりして、体を“起こす準備”をします。
② 急に前かがみにならない
洗顔や靴下を履く動作で痛みが出る方は多いです。
朝は特に、ゆっくり動作することが大切です。
③ 日中に「少し動く」
実は、朝の腰痛対策で最も重要なのは“日中”です。
・歩く
・軽い体操
・ストレッチ
・リハビリ
こうした習慣が、翌朝の腰の状態を変えます。
ラジオ体操なども有効ですし、今までご紹介してきたエクササイズをおこなっていただくのも良いかと思います。
📝 【高齢者のためのやさしいリハビリ】第1回:膝&股関節編 ver. 1
注意したい腰痛
一方で、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
・足のしびれ
・力が入りにくい
・安静時も強く痛む
・発熱を伴う
・夜中に痛みで目が覚める
このような場合は、単なる筋肉や加齢だけでなく、別の病気が隠れていることもあります。
早めに整形外科へ相談しましょう。

おわりに
朝の腰痛は、「歳だから仕方ない」と思われがちな症状です。
しかし実際には、
・筋力低下
・柔軟性低下
・長時間動かないこと
・寝具や就寝環境
など、改善できる要素が多く含まれています。
大切なのは、“痛くなる前から少しずつ動くこと”。
無理に頑張る必要はありません。
毎日の小さな積み重ねが、「朝のつらさ」を減らし、将来の動きやすさにつながっていきます。

富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。