知っ得コラム

【“歳だから仕方ない”は本当か?】高齢者の体の衰えと改善できること・できないこと

医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長 富岡義仁

2026.05.11(月)


はじめに


外来でよく聞く言葉のひとつに、「もう歳だから仕方ないですね」があります。一方で、厳しい言い方にはなりますが、年齢を考慮せず、身体も若いままの気持ちでいて、現実との乖離がある方もいらっしゃいます。

確かに、年齢とともに体は変化します。
思い通りに動けないことも多くなってくるでしょう。
しかし、そのすべてを「仕方ない」で片付けてしまうと、本来防げたはずの衰えまで進んでしまいます。

大切なのは、
「現状を正しく認識し、年齢とともに受け入れるべき変化と、努力で変えられる部分を分けて考えること」です。

この2つを正しく理解することで、無理をせず、それでも前向きに体を守ることができます。


受け入れるべき変化


まずは、「誰にでも起こる自然な変化」です。

① 軟骨のすり減り

膝や股関節の軟骨は、長年の使用で少しずつ薄くなります。
これは加齢現象であり、PRPと呼ばれる再生医療の注射などで多少の改善が期待できる場合もありますが、完全に元に戻すことはできません。

② 筋肉量の低下(サルコペニア傾向)

何もしなければ、筋肉は年齢とともに減少します。
特に下半身の筋力低下は避けにくい変化です。
立ち上がりや歩行の不安定さは、よく見られる変化かと思います。
歩きづらくなることで動くことが億劫になり、さらに筋力が落ちるという悪循環に陥りやすくなります。

③ 回復力の低下

ケガや炎症の治りが遅くなるのも自然な変化です。
栄養や睡眠で補うことが大切です。

④ 季節や気温による痛みの変動

気圧や外気温によって、落ち着いていた痛みが再燃することがあります。
特に冬や雨の日(低気圧))には悪化する傾向があります。
痛みが続く場合には整形外科での相談をおすすめしますが、数日で軽快するようであれば過度に心配する必要はありません。

これらは「ゼロに戻す」ことはできません。
ただし重要なのは、「進行スピードはコントロールできる」という点です。


抗えるもの(ここが重要!)


一方で、以下は「年齢のせいにされがちですが、実は変えられる部分」です。

① 筋力低下

上記と矛盾するようですが、筋肉は鍛えれば何歳からでも改善します。
適切なリハビリや運動を行えば、高齢者でも筋力は確実に向上します。
以前のコラムをご覧いただいたり、ラジオ体操から始めていただいても構いません。まずは動き出すことが大切です。
📝 高齢者のための散歩のススメ|転倒予防と健康維持のポイント

② 関節の硬さ

「歳だから体が硬い」は半分正しく、半分誤解です。
動かさないことによる硬さは、ストレッチや運動で改善可能です。

③ 体重増加

代謝は多少落ちますが、体重増加の主因は生活習慣です。
体重は食事と活動量の調整で十分コントロールできます。
たくさん動いて、3食しっかり食べることを意識しましょう。
前回のコラムもご参照ください。
📝【ダイエットのウソ・ホント】膝痛・腰痛を治すための体重管理とは

④ 姿勢の崩れ

猫背や前かがみ姿勢は、骨の変形など難しいところもありますが、筋力と習慣の影響も大きく、時間をかけて改善できる部分もあります。

⑤ 痛みへの過度な回避行動

「痛いから動かない」ことで、かえって悪化するケースは非常に多いです。
適切に動かすことで、痛みは軽減することもあります。
例えば膝が痛い場合でも、膝に直接負担をかけずにその周囲の筋肉を鍛えることで、痛みの改善につながることがあります。

つまり、「歳だから」と思っている多くの問題は、
実は「使っていないこと」が原因である場合も少なくありません。

ここで重要なのは、“ゼロか100か”で考えないことです。

  • 若い頃と同じように動ける必要はない
  • しかし、今より少し良くすることはできる

    例えば、
  • 正座はできなくても、椅子から立ちやすくなる
  • 長時間歩けなくても、外出が楽になる


この「小さな改善」が、生活の質を大きく変えます。
一日二日の努力では明らかな結果は見えてこないかも知れませんが、
1ヶ月2ヶ月と続けていくことで、確実に外から見てもわかる変化につながります。


整形外科の立場から見ると、
「歳だから仕方ない」と言われている状態の中には、本来もっと良くできる余地があるケースが多く含まれています。

一方で、無理をして若い頃と同じ状態を目指す必要もありません。
高すぎるゴールを設定してしまうと、それを達成できないことが負担になってしまいます。


大切なのは、

  • 受け入れるところは受け入れる
  • 変えられるところは積極的に取り組む
  • 焦らずじっくり続け、習慣化する


このバランスです。


おわりに


「歳だから仕方ない」は、半分正しく、半分は誤解です。

体は確かに変わります。
しかし、その変化のすべてを受け入れる必要はありません。

今より少し動けるようになる
少し痛みが減る
少し外に出やすくなる

それだけで生活は大きく変わります。
“年齢に合わせて、できることを増やしていく”
その考え方が、これからの体を守ります。


富岡義仁
医療社団法人山手クリニック リオクリニック 副院長
整形外科専門医
国際オリンピック委員会公認スポーツドクター
トップアスリートから子ども、高齢者まで幅広く診療を行う。薬の処方だけでなく運動療法を通した症状の改善を目指している。

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1 件の返信 (新着順)
まっきー
2026/05/11 11:08

約三年前に目の違和感を感じ始めて近所の眼科を受診したら
「年齢的な・・・」
と言われましたが、別の眼科へ行くと
「斜視ですね!」
と言われてから治療を始めました。



胸の痛みで循環器系の病院を受信したら
「それ(胸の痛み)よりも血圧が高いので・・・」
“それ”って何やねんと思いながら、別のクリニックを受診すると、何か色々検査した結果
「血圧もこれぐらい大丈夫ですし、他も・・・」



元々疑い深いので一つの意見に振り回されないように複数の意見を聞くようにすると、ボクの場合はどうするか判断しやすいです!

あまり年齢を感じたことや考えたことはない(別にアホではない笑笑)し、歳のせいにしようとも思わないので、身体の不具合に対してちゃんと治療するか、症状に対してだけ対処するのか、ライフスタイルを変えるか、放置するかだと思うので、それぐらいはDr.に言われるがままではなく(もちろん多少意見は聞いて)自分で判断するようになりました(そう判断するようになったのは、もしかすると『歳のせい』??💦笑笑・・・)



そこで得た結論が『病は氣から』・・・「そっちかいッッ💦」って思うかも知れませんが、一周回って帰って参りました笑笑
・・・いや、ストレスが一番良くないことに気付いてしまったら、そうなりますよ笑笑